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上のほうから新しい。

<2005>

監督:ピーター・ジャクソン
 1933年のモンスター映画の原点とも言える作品のリメイク。
ギラーミン版についてはなかったことにしとこう。

 口をパカパカさせた時点で、ばっと脳内に、ああ、そうだコレだ、忘れてたけど
オブライエン版で一番感動したのはこの口をパカパカさせるところのちょっとした動きで
あって、ここでパカパカさせないとどうにも物足りないであろうところをきちんとパカパカ
させたあたりで、全ての意味においてこれは完璧なリメイクなんだと思った。

 190分の尺は伊達ではなくて、そして無駄でもなくて、あるべくしてこの時間で
あったものを半分にしたのがオブライエン版で、これが完全版です。といえる無敵の
起承転結感が漂う、脳内補完の必要性がない充実ぶり。

 具体的にはゴリラが恋したアン・ダロウというのは、1933年では叫んで気を
失うだけのポジションだったのが、ある程度ゴリラに感情移入をする、という描写が
時間を割いて丁寧に描かれる。これでラストがグッと締まるわけで、モンスターパニック
ではなくてドラマとしての側面が美しく際立ってくる。まさに美女と野獣なのである。

 ドラマの流れを追うと3つのパートに構成されていて、島に着くまでにキャラクタを
掘り下げて、島についたらやりすぎで、NYに戻ってからは街中デストロイを見せながら
しつこいぐらいの感動のラストに。

 特筆したいのは中盤のスカル・アイランド編で、ここでピーター・ジャクソンの
「大作を任されてるんだから慎重にね」という自制心がちょっと壊れます。

 まずヤコペッティ魂あるふれる恐怖土人劇場が大展開。
理性ある「人間」として描かれる気配は微塵もなく「土人は土人なんだよ!
架空の島だから別に誰も怒らねえよ!」という素敵な演出。また撮り方が怖いのなんの。
もちろん(劇中の年代では)土人に人権はないのでガンガン撃ちます。

 で、あ、これは本気だ、と思ったところでゴリラが登場。ここら辺でこれは
別映画『スカル・アイランド』
なんだとだいたい気がつきます。
あんま言うとあれなのですが、一部、絶対に必要ないんじゃないかなー、
と思う勢いの素敵なクリーチャーがマンイーティングするシークエンスが満載。
しかも展開が怒涛の勢いで、息付くヒマなく次から次に新しいモンスターが!
もう劇場内、若干笑いが起こるぐらいの。

 もちろんここでVS T・レックスという最大の見せ場もあり、また原作より
かなり大変な事になるので、ここら辺でもう見てるほうの許容量がいっぱい。

 そこからNY編、ここはもう語る事はないですが、一つ言うなら、エンパイア・
ステート・ビルの高さの表現が素晴らしい。

 全編通して、とにかくアンディ・サーキス演じるコングの動きが、ゴリラの動き
なんかあんまりよく覚えてないけれども本物っぽい、と感じさせる素晴らしい演技。

 面白さの絶対値みたいなものがあると仮定して、それで上限に近いかっていわれると
そうではなくて、これは1933年の『キング・コング』 を愛した人間による、愛した人間
全てにささげられる完全版であって、そこら辺の思い入れによって評価はけっこう
変わって来る気もする。

 とにかく苦笑いが日常茶飯事の昨今のリメイクブームの中で、
作られたことを本当に感謝したい一本だと個人的には思った。

(2005 12/16)
監督:ダニー・ボイル
 2004年のイギリス映画。2005年度英国インディペンデント映画賞最優秀脚本賞受賞。

 真っ当なハートウォーミング・ファミリー映画なんだけれども、ダニー・ボイルが
作る事によってここまでポップでリリカルに化けた、という後感が。
映画そのものが躍動感を持ってラストまで走っていく感じがいかにも、というか。

  ジャンルが変わっても演出的には同じなんで、テンポ良く、
ストレンジな映像を交えて、そして鳴らすべきとこできちんと音が鳴る。
これだけでもうずいぶん心地良いのであとはヤク中だろうがゾンビだろうがデカプリオ
だろうが子供だろうが物語はそれなりに見るものをきちんと運んでくれる感じで。

 大金だとか善行だとか、テーマ的に説教臭くなりがちで、
確かにラストは後々考えるとそんな感じがしないでもないんだけれども、
まあ見てる時はそんな臭く感じなかったなあ。セリフの部分とそうでない部分が
上手いこと機能してるから、ある程度こっちに預ける感じの演出の作り方が
良かったんではないかと。

 聖人の出てくるシークエンスがけっこう全部秀逸で、妄想ともとれる場面を
変なエフェクト使わないでそのままさっくり撮ってしまうあたりが個人的には
心地良かった。

 その、真っ当に佳作感があって、非常に物語としてはストイックでそれでいて
演出がそこそこ個性的、というミニシアター的満足感が満載だなあ、とか。

 ただトゲがないぶん余韻はあんまない。

(2005 12/13)
監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ
『CUBE』の同監督の2003年作品。

 オチを期待するとしんどいのだけれども、それさえなければかなり素敵な勢いの
バカ映画でかなり好きだと思った。主人公を子供に置きかえればキッズムービーに
なりそうな(それでも短編だろうけど)プロットをどうしようもないオッサン2名に置きかえる
そのセンスがもう超人的で、真っ白い空間でオッサン二人が延々繰り広げるコントを
後半ずーっと浴びせられるこの状況。うわすげえ。

 その序盤の二人がコンパクトに追い詰められていく描写てのが心地良くて(むしろ
演出的にテンポが良いのはここだけなんだけど) 、普通に面白いなあという感じ
だったのだけれど舞台が一転してからのこの作品そのものの方向性がまったく
不明で、それこそまったくの真っ白なんではないかと、どう終わるんだコレは、
と思ってたら…。

 あとEDロール後にさらに追い討ちが。

 シチュエーションを持て余した感はあるんだけれど、そこまで難しくなくていいや
という事なんではないかと、ただあの空間を作り出した事、あと地面の音と弾力を
設定した時点でこの映画ほぼ完成してたような気がする。あと二人のキャラクタに
感情移入の余地がないのもすばらしい。おそらく鑑賞側の視点はカメが正しい。

 きっちり意図出来たバカ映画だと。
面白いかどうかは個人差あるだろうけど、記憶からは簡単に消えない一本。
消せないといったほうが良いかも。

(2005 11/12)
監督:ティム・バートン
    マイク・ジョンソン
  バートン謹製ストップ・モーション・アニメ。ナイトメアでは脚本、ジャイアント・ピーチは
製作だったので実質今作で初監督。共同監督のマイク・ジョンソンは前述2作の
アニメーターを経てCMや短編でエミー賞等を受賞して今回抜擢。

 細かい光りの揺らぎや、独特のコマ落ちが引き起こすストレンジ感てのが
やっぱり圧倒的で画面がもつ質感を楽しむだけでほぼ全編楽しい。

 バートン感あふれるバッドテイストな造型&モーションが、
それこそわりと期待してたストレンジ感がそのままきちんとありすぎだった。

 ただビッグ・フィッシュあたりではそんなに感じなかったんだけれども、
チョコレート・ファクトリーとこの作品あたりからどうにも作品として安定しすぎていて、
あれだけこめられていた繊細な悪意をまったく感じなくなってしまった。
エンターテインメントとしては間口を広げるのだけれども、
個人的には何か物足りなさを感じてしまう。その常に苦笑いのハッピーだった
ものが、もっとストレートになってきてしまっているというか。

 逆にストップ・モーション・アニメ&バートンという組み合わせで、根底的に
普通のテーマを敷いた構造てのがよくよく考えると悪質だ、と思うのは相当ゆがんだ
受け取り方なのか。むしろそうであって欲しいという願望はあるんだけれど。

  まあ監督の作品感については置いといて、これ一本としてはとても(毛虫の
不細工さ加減とかが) 素敵で、ファンタスティックで、ロマンチックです。
恋愛ドラマだとするとちょっと各位の心情表現が弱い気もするんだけれども、
でもあんまりそこ作りこまないほうが、何も考えずに映像の質感を楽しめると思った。

(2005 11/12)
監督:富野由悠季
 総集編3部作の2本目。一部声優交代が論争を呼んだりも。

 いわゆる中継ぎの話で、手法としては一番面白く作りやすい(盛り上げる
だけ盛り上げて畳まないで引っ張れるから) というイメージが個人的にはあるのだけれど、
御大にはあんまり関係ないなあというのが後感で、さらに強化されたセリフの洪水に
心地良く身を浸すのがたまらないという感じ。

 前作ではある程度の「1作目」としての責任感のようなものを感じたんだけれども
今作はすっ飛ばしまくりでもう言葉が舞いまくり。そして恥ずかしい表現も満載で
これが20年経って何の臆面もなく愛を語れるようになったトミノのゼータなのかとか。
そこら辺は癖があるんだけれどもこの流れの中ではもう面白いとしか言いようがない。

 キャラクターのモチベーションが全部おかしいのに格好よかったり、
あと前作より御茶目な部分も満載で、あーすげえなと。色々な意味で。

 相変らず一見さんはお断わりで、ブッたぎり方もなかなかのダイジェスト感
はあるのだけれども話がきちんと見える様にはしてあるので散漫な気はまったくしない。
ただ1作目の勢いに比べるとやや間が長い感もあるのだけれども、それは今回の
テーマ的な部分に起因してくると思うので、悪いと感じる事は個人的にはなかった。

 んでラスト寸前できちんと待ってたキャラクターをほりこんでくるセンスとかだけは
きちんと定石通りで、そこ外さないところが素敵だというか、期待には応えるというか。

 まあ「好きな人は好き」で締めるにはやっぱもったいないと。
ただそれを好きな人が言っても説得力はないだろうなあ、と。

(2005 11/4)
監督:トニー・スコット
実在のブロンド・バウンティハンター、ドミノ・ハーヴェイを題材にした作品。
主演はキーラ・ナイトレイ。

 後感はとてつもなく良かったんだけど、まあ相変らず脚本にも恵まれず、あげく
字幕(戸田)にも恵まれないのがトニー・スコット的というかなんというか。

 固有名詞を調べない人が適当に直訳すんのはもう勘弁してください。

 その部分のもっさい訳のせいでなかなかの『ナチュラル・ボーン・キラーズ』
(アウトローきどって安いマスコミ批判)作品にとられかねないんですが、
そうではなくて、やはりこれはトニー・スコット感に溢れた堅実な演出による佳作だと。

 特にEDクレジット直前のシークエンスは禁じ手ではあるけれども
それを見せる形が完璧で、余韻に大きな花を添えた感が。

  映像のブレイク・ビーツっぷりが今回最大級で、編集段階でいじっただけでなく
おそらく撮影時からカメラいじくりまわしながら撮った雰囲気が、決してアフターエフェクト
触り始めた学生作品のような落ち着きのない感じではなくて、きっちりとシークエンスの
意図に沿っているんで、まあ目が疲れるって言われたら仕方がないのだけれども
個人的には楽しかった。その細かい映像に合わせて音の鳴るタイミングとかも絶妙。

 その個々の視覚的アプローチは飛ばしてるんだけれども、ベースの構成、
各シークエンスの配分なんかがまさに職人というかあまりダレ場をつくらないというか。
終盤に向けての収束感がきちんと作れるてのは基本ながら素晴らしい。

 ただアウトローでハードボイルドかっつーとそうでもなくて、シリアスなんだけど
どう考えてもコントにしか見えない場面が多々。
特にトム・ウェイツがやって来るところは、何か無性におもろかったので
ゲラゲラ笑ってたけど理由はわからんかった。

 あとおおむね貧乳の人ががんばってる感じが微笑ましいとかそういう感じも
ありつつやっぱり一つきっちりとおもしろいトニスコ作品。

 よくよく考えると還暦超えてこの映像センスてのはちょっとすごいな。

(2005 10/27)
セブン・ソード
監督:ツイ・ハーク
 レオン・ライ、ドニー・イェン主演の香港製武侠大作。原作は小説。

 七人描くには2時間30分の尺でも足りないわけで、どうしてもあぶれる人が
出てくるというか、キャラクタ的に死んでしまうというか。ぶっちゃけでもそんな
事はどうでも良い訳で、期待してるのは変な武器が変な感じで壮大な破壊や
殺戮を繰り広げる四千年の歴史を間違った意味で痛感させてくれる演出なわけで。

 そんなで冒頭の悪の軍団が実用性からみればどう考えてもそれは違うだろう
という武器の数々で善良な市民を虐殺(といってもグロさはない)していくシークエンス
でこれはひょっとして当たりなのかな、と、ちょっとだけ。いやフー・チンジュがちょうちん
転がすあたりまではいやすごいなあ、と思った冒頭15分。

 こっからが長い。というか、まあ、ツッコミどころ満載の展開というか超展開
というか、とりあえずストーリーは置いとこう、という気分に。なんにせよ最後まで
どこにも感情移入を許さない各キャラクタの不思議モチベーションの数々、伏線かと
思いきや投げっぱなしシークエンスの数々、まあ徐克なのでという事なら大まか
納得出来るのだけれども、なにかこうちょっと期待してたぶん落胆も多きい。

 アクション部はドニー・イェンが動いてる部分はおおまか楽しいといういつもの
感じでラストの壁に挟まれた場所でのアクロバティックな殺陣は見事。

 んーあと個人的には各剣、せっかく特性持たせてるんだから、そこら辺を
生かした展開(個別には若干あるのだけれども)を見せられたら少年心が踊ったのに、
という無念感が。

 も一つ、川井憲次スコアは劇中にはあんま感じなかったのだけれどもEDで
流れてるのはエライ熱かった気が。

 なんか全体的にもひとつ噛み合ってない気がした。
 
(2005 10/21)
シン・シティ
監督:フランク・ミューラー
    ロバート・ロドリゲス
フランク・ミューラー原作のアメコミをロドリゲスが本人を巻き込んで映画化。
ブルース・ウィリスはじめ豪華キャストもノリノリで参加。

 ザ・マンの冒頭からハーティガン編の導入部てのが効果的で、ここでモノクロと
モノローグ多用の目と耳の違和感てのがほぼ慣らされる。こっから怒涛のマーヴ編
がはじまるわけで観客のボルテージをきちんと作った上での幕開け感がかなり
心地良い。逆にこっからバイオレンスも爆発なのでダメな人はここら編で許容量
超えちゃうだろうなあ、という感じ。

 とにもかくにも一つあまりに美しく完成されているマーヴ編を経て、どうにもコメディ臭
が強いドワイト編に入るのだけれども、コメディというか全編に渡ってタラ臭がしてるので
演出面では車内の頭に銃のささった人との会話シーンだけということになってるけど、
おそらく現場になんとなく居て、なんとなくいろいろとアドバイスしたんではないかと
そんな勢い。だって靴だけ赤いとか、矢がささるとか、何よりもミホのキャラクタはタラ先生
の最も得意とするとこじゃないかと。

 そんでラストにハーティガン編の後編があるわけで、これは前2本と比べると
オーソドックスではあるんだけれども、それであるが故に黄色い人のインパクトが
尋常でないので(特に初登場時)もうなんかガッチリ来た感はある。

 後感としてはマーヴ編だけが突出してる印象があるんだけれども、全体としての
バランスもこれをこれとして作っている意図が端々まで感じられるので、何かこの
完成度においては言及の域を超えていて単純にああ、すごい映画だ、と。

(2005 10/21)
監督:ロブ・コーエン
 製作費1億ドルかけたけど北米興収は3千万ドル止まりの超大作。主演はジョシュ・
ルーカス、ジェシカ・ビール、ジェイミー・フォックス。

 惜しいのは、ただ一つ惜しいのは、こういう展開ならば最後のところをきっちり描けば
それなりの号泣作品になり得たところを、根本的にキャラクタライズというものを監督が
無視しちゃったためになんか適当に幕が降りた間が否めないという点。

 アラスカから移動する機内のやりとりにもう一つ含みを持たせて、もーちょいラストに
溜めがあれば、これはちょっとした佳作に成り得た(すくなくとも後感はかなり良かった)
ところをドカーンとやっちゃって挙句ジェイソン扱いですか…。

 OPから見に来た映像をドンドン見せてくれるわけで、その期待にはほぼ沿った
形の中学生スピリッツ溢れる格好良い飛行機映画感満載。で、もちろんストーリーも
良い方向に期待を裏切られる事もあんまりないんだけれども、テンポを重視してるんで
サクサクと進むんで退屈することもなく、あー、やっぱりこういう映像に動きのある作品
に関してはロブ・コーエンはうまいなあと。

 ただ人物描写が終始不自然なのでやっぱドラマには向いてないなあ、とも。

(2005 10/21)
監督:ティム・ストーリー
 スタン・リー原作のアメコミを映画化。1969年に国内でアニメ版が放映された時の邦題
は『宇宙忍者ゴームズ』 。監督は『バーバーショップ』『TAXI NY』の人。

 大雑把ではあるんだけれども悪くないという後感。悪いとこ先挙げると、
まずこの手のアメコミ映画に良くある世界の命運を賭けてるのに、スケール感が
狭いという点と、あとは最終決戦要素が弱いんで、これで終わりかい、と思った。
いや絶対あそこでも一回動くだろうと、なんかアングルも意味深だったし。

 そこら辺除けばおおむねヒーローものとして、そして第一話としてコンパクトに
まとまってて流れとしてはそこそこ心地良かったなあ、と。特に序盤の橋の
上での展開てのは導入部としては素晴らしい流れ。

あと4人のキャラクタライズ、とりわけリーダーとヒロインではなくて、
その能力に歓喜するヒューマン・トーチ、
そして自分だけ醜くなってしまったのに悩むザ・シング、
この2名の対比が明白に描かれてた点が流れをスムーズにしてたように感じる。

 ラスト前のザ・シングの決断にはも少し溜めがあれば号泣だったんだけれども。
そんでもなんか向こうのほうで光ってる感じはちょっと良かった。

 おおむねシナリオ的な部分のディティールをとやかく言うもんではなくて
(終盤の詰め方とかけっこう酷いんだけれども) とにかく音楽ジャカジャカならして
繋いで行く感じの適当さ加減も全体の雰囲気にマッチしてるんで最低限の
テンポだけは保ってるあたりにノリ重視の監督のこだわりを見た気がする。

 細かい部分の映像が変に印象的で、特に「落下」描写に気合入ってた気が。
ザ・シングとドゥームが落ちてプールに着水するところとかちょっと未知の映像。

 そこに限らず終盤のアクション描写はなかなかファンタスティックになって
行くのでそこら辺も少し見たかったというのがおおまかな感想。

(2005 10/07)
監督:君塚良一
 踊るシリーズ、スピンオフ第2弾。本広監督ではなく、同シリーズのメインライター
君塚氏を脚本・監督に据えての布陣。主演は柳葉敏郎。

 これは酷い。何が酷いかっつーともうわりと全部なんだけども、特に目を引いたのが
撮影全般。照明の具合が意図的なんだろうけれども、その意図が伝わる以前に
拙さだけが爆発するので、色調を抑えてコントラストを強めにするにしても、もう少し
板についた画を作ることが出来たんではないかと、もうそればかりが気になって
仕方なかった。

 そこんとこも超越した意図ならば、個人的に合わなかったという事でいいです。

 ストーリーラインが粗いのはこのシリーズの特徴なので、それはまあ置いといて
(それにしても主演の人と、メイン脇役の田中麗奈演じる新米弁護士が
何も解決しないまま終わっていくのはさすがにどうかと思った)、とにかくテンポが
悪いのとキャラクターが弱いともう全く別物になるんだな、というのを改めて実感。

 真下との対比で見事にその監督の手腕の差が出たのと、あとは亀Pはここのスタッフ
にゃあんま何にも言えない立場なんじゃないかと。それともシリーズ人気さえあれば
これでもそれなりに大丈夫だと踏んだんだろうか。

 けれども既存キャラクタの使い方もいわゆる「臭う」使い方で、何かちょっとした
ファンの人が考えたような挿入具合。アミーゴスの空回り具合が顕著。
あと真矢みき演じる沖田さんはいつからあんな丸い人になってしもたんでしょか、
もっとトゲトゲしてないと萌えません。(えー)

 一つ卓越してたシークエンスは終盤の聴取。ここでの八嶋智人のえぐるような
イヤな人間の演技はちょっと唸った。あと木内晶子の空洞感もなかなか気持ち悪くて
良かった。

 もうでもそれぐらいしか、前半はまあ、これからの展開次第だなあ、と思いつつ
観てたのですが、中盤以降どうしようもなくなって来るので(日記が出てきたあたりから、
クローズアップほぼ固定でもうどんどん喋っちゃうからさあ大変) なんかすげえなあ、と。

こういうものでも最大公約数のラインを押さえてくるのが亀P作品だと思ってたので。

 シリーズとしては一線を画した、というだけでは片付けられない線を
ちょっと超えてしまった気がする。悪い意味で。

(2005 9/11)
監督:三池崇史
 プロデュースチーム「怪」(水木しげる・荒俣宏・京極夏彦・宮部みゆき)が贈る
夏の大作っぽい雰囲気がする角川映画。

 良い具合での素敵な子供映画だというのが一番大きな後感。
年齢層限定という意味ではなくて、子供に見せると良い具合の原体験に
なる感じの映画というか。グロテスクな妖怪の造詣と微妙なエロスぶんが。

 何がエロいかっつーと川姫とか栗山千明とかよりも神木少年がもっともエロい
声とシルエットがまさに神懸り的で、そしてそれを意図として撮ってる感が
これでもかと伝わって来る歪み具合がとても心打った。

 キャスティングの妙はそれに留まらず端々まで心地良いのだけれども、
そのチーム怪の意図と三池監督の意図が上手い具合にミックスされて
変な映画になっているのが、結果として良い方向に働いてると感じた。

 すねこすりの扱いだけが客寄せ的でそれ以外は結構バッドテイストに
仕上げ切ってるなあと。特にラストの展開の壮絶さ加減はなかなか大作
銘打った作品ではありえないブッたぎり加減。ここら辺は好き嫌い出るんだろうけど
そこを当たり触らずまとめず、妖怪的な不可解さで叩き終わった感は個人的には
結構好き。

ただそこそこ見得を切った冒頭のモノローグが、終盤あんまりしっくり
繋がらなかったのがちょっと残念。特に川姫に恋した描写がないしなあ。
あそこががっちり来て、そんであの切ないエピローグなら無敵だった。

(2005 9/11)
監督:エリック・ダーネル
    トム・マクグラス
 ドリームワークス製3DCGアニメ。音楽がなぜかハンス・ジマー。
キャストもベン・スティラー、クリス・ロック等々豪華な面子。

 動きが速すぎるよおい。というのが感想(おい)
特筆するようなストーリーラインではないのだけれども、食物連鎖を彷彿とさせる
部分のシークエンス(サッチモの"What A Wonderful World"をバックに諸行無常の
捕食の連続を見せる)あたりの個々の演出があまりに光る。

 それ以外でも画面内の全ての要素が細かく動くんで、もう眺めているだけで
楽しい世界。特にロシア特殊工作員チックなペンギン達が素晴らしく機能的で
影の主役と言っても過言ではない勢い。

 とにかく序盤の動物園の観客のモブからマダガスカル島のキツネザル達の
ダンスまで、ひたすら心地良く動くというのがだいたいの印象。
あと一筋縄ではいかせないドリームワークス魂がそこそこ健在で、いずれも外見は
だいたい可愛いと言うには程遠い。

 とりあえず3DCGで再現されたハンナ・バーベラ感を堪能出来るつーインパクトてのは
なかなかおもしろかった。スコーンと抜けるんだけれども観賞中の目が楽しい感覚
てのは少し残るかなあ。EDのダンスはもいっぺん見たいと心から思うぐらい秀逸。
 
(2005 9/11)
監督:トレイ・パーカー
 おなじみトレイ&マットの二人が、サンダーバード見て、うわ人形おもしれーとか
思ったので作った映画。大統領選と被って右から左から政治批判の的に。

 問題なのは人形の出来が素晴らしすぎるのと、あとブロックバスター映画を
わりとギリギリの線まできっちりとやってしまった点にあるから、
(色々な意味で)間に受けるバカが出てくるんだろうと思うけど、
まあそういうピュアハートの持ち主は それはそれで面白いという事で。

 なんせ作ってるのもバカだし見てるのもバカだから、それでいいのだ。

 最後のゲイリーの演説でホントに泣いたりしてもOK。バカだけどな。

 パロディのハードルがそれなりに高くて、間とか空気感に素養がなければ
ちょっと面白さは伝わらない部分もあるんだろうけれども、逆に直感的に
人形劇ならではのマヌケさ加減でプリミティブな笑いの衝動は来る。

 とにかく人形劇であるというのがこの映画の最大の笑いどころであり、
それを思いついた時点でだいたい大成功。

 あと先述の通りおおまかな流れがあまりにもしっかり超大作していて、
葛藤、ロマンス、仲間との不和から転じて固い結束等、個々のシークエンスの
配置だけみればそん所そこらのアクション大作よりもテンポ良くこぎれいに
まとまっているベースの強さが、バカさ加減をさらに際立たせてあまりにも
素敵な雰囲気の作品に仕上ってるのに心打たれた。

(2005 08/4)
監督:マイケル・ベイ
初の脱ブラッカイマーで贈るマイケル・ベイ最新作はオリジナルSFアクション。
主演はユアン・マクレガー、スカーレット・ヨハンソン。

 カイマーの皮を剥いでも中身はあんま変わってないんじゃないかという気が。
何が違うといえば、鑑賞前に作品から受けるイメージが希薄だとかそういう事で。

 まあ、ショーン・ビーンとブシェミが見れるだけでだいたい良いという事で。

 クローン人間の倫理的問題とかをテーマとして語ろう、という気はまったく感じられず、
主にインタビュー用のトピックというか、まあ作品そのものの着地点をとりあえず、
という感じで、あんまり重くならない程度に適当にはぐらかしてあるあたりが
消化不良なんだけれども、そこは基本的にポイントではなくて、
ぶっちゃけ中盤までは全部プロローグだと思って良いと。

 この映画の開始は走行中のトラックから鉄の車輪(電車が浮いてる時代なのに、
なんでそれが必要なんだろうとかは、考えたり、ましてや言ったりしてはいけない)
をどんどん転がして、追手をガスガス殺すあたりからこの映画が始動。

 街中破壊の限りを続けて逃げる二名と追う「請負人」チーム、
このシークエンスのカーチェイスなりマンチェイスなりのデストロイ描写に
関してはやはりマイケル・ベイつのは一味違って、きちんと(関係ない)人が
バイクに跳ねられたりする痛みを感じない妙な残酷描写が大変楽しく、
でもそこまでして必死で生きようとするクローン達の悲哀が伝わってくるわけでもなく。

 もうね、ラストのほうねジャイモン・フンスー演じる役のポジションとかがコント。
 あとマイクロソフトの露骨な広告展開もコント。

 ただ一つだけ言えるのは、一本の流れとしては非常に堅実で大きく間延びもせず
きちんとまとまってるわけでそれなりに見れるんだけれどもサスペンスな部分は
まったく投げっぱなしで、アッパーなまま閉幕していくので、まあこんなもんかな、と。

(2005 08/4)
監督:三木聡
舞台演出、放送作家として多くの作品に関わってきた同監督が2作目にして挑む
完全オリジナルコメディ。主演は上野樹里。

 開幕直後のパラパラアニメーションから「ちょっとオシャレ」なプロダクションデザイン、
それっぽいモノローグ、あと微妙に荒れてるビデオ撮りと明かにわかる映像。
これはちょっとマズいぞ、と正直最初から思ってしまいました。

 まったくの偏見でした。ごめんなさい。

 もろもろポイントはあるんですが、中盤以降おもしろすぎです。特にスパイ夫妻が
登場してからの展開がコメディとしてやや神懸り的な笑いの波を持ってくるので
ちょっとこれはすごいと。投げっぱなしのようで、きちんと一つ一つ伏線を拾う
シナリオの細かさが土台としてしっかりあって、あとはひたすら細かく笑いを
紡いでいく。小道具が特に秀逸で、YahooBBの赤い紙袋とかもう最高。

 それをどう使うかとかじゃなくて、それそのものが面白いものをそれとなく
使うセンスてのがかなりハイレベル。

 終盤、ちょっとセンチメンタルにな展開でやや蛇足だなあ、と思いもするのだけれど
きっちり閉めるにはまあこれもありだなあ、とか。EDのレミオロメンでだいぶ浄化され
てしまうけれど、後感はなんか心地良くなる仕様。

 上手いこと説明できないんだけど金鳥のCMを延々見てる楽しさがあったというか。
そのこてこて具合に上野樹里と蒼井優がビジュアル面で濃くなり過ぎないよう、
きちんと中和剤として機能している。ここら辺の門戸の広げ方も結果的には全部素敵。

(2005 7/29)
監督:リュック・ジャケ
動物学者でもある同監督が南極でペンギンをひたすら撮り続けた仏製ドキュメンタリー。

  これが「ぺんぎん物語」という邦題なら迷わずスルーしていたものを、それに加えて
引き合いに『WATARIDORI』 『ディープ・ブルー』を挙げるもんだから、もう何の迷いも
なく劇場に足を運んだわけで、正直GAGAに一杯食わされたというのが後感。

 どういう事かというと、もうOPから歌ありで以降ナレーション(というか雄ペンギン役と
雌ペンギン役にそれぞれ声優がいる)で延々わかるはずもないペンギンの心持を
勝手に1人称で語ったりするので、いわゆる『ラッコ物語』 とかと同じ方式。

 けれどもその1人称がどのペンギンを指してるのかが曖昧で、ストーリーとしては
一組の夫婦ペンギンを追いかけてる形ではあるんだけれども、見てるほうとしては
全部同じにしか見えないのでも一つ腑に落ちない。

 子供を失った母ペンギンがそのメインとされてるペンギンの子供を奪おうとする
衝撃的なシーンがあるのだけれども、一乱闘あったあと子ペンギンがナレーションで
大変だったけど助かった云々言うんですが、個人的には母親が入れ替わってても
わかんねえな、とかそういうので、そこら辺が面白かった。困った事に。

 おおむね子供向けの呈をしておきながら決してスゥィートに収まりすぎず
「ちょっとした残酷さも描かないとね」的お約束シークエンスも多々ありアザラシを
あたかも怪獣の如く描いたり、しかもそれを後のシークエンスで無意味に
フラッシュッバックさせたりとトラウマ要素を残しながらも、あんまバクバク食べられて
臓物デローンという感じの描写(つか捕食される直接描写そのものがない)は
全部省かれてるのでやや中途半端。

 個人的には子ペンギンを襲うカモメのクチバシの形がグロくてトラウマです。

 ま、そんな要所要所にアクセントをつけつつも本編はユルいフレンチポップ
(もちろん歌入り)やら、デパートでかかってそうなインストで彩られてるので
非常に軽く流せる仕様。睡魔と戦うことしばしば。

 ただひたすら白い南極の絵面からは、スタッフの鬼迫のようなものは伝わって
くるんで、表題の動物ドキュメンタリーものをとりあえず見た感はある。

 個人的には『ディープ・ブルー』のように無骨に映像を紡いだドキュメンタリーよりも
こういった演出の意図がきっちりしてるもののほうが好きなんだけれども、
ちょっとこれは低年齢向けで合わなかったというのが正直な感想。

 ペンギンが転ぶだけで面白い年頃の人とかには是非。

 とりあえずこの炎天下の季節に公開するのは何よりも正しいとは思った。
 
(2005 07/29)
監督:ルイ・レテリエ
ジェット・リー主演、リュック・ベッソン製作・脚本、共演にモーガン・フリーマン。

 ベッソン組つー時点でだいぶ期待値下げてみたら、そこそこ良かった。

 普通に考えて、袁和平と李連杰という並びだけでもうそれで一本完成したも
同然なわけ
で、要はアクション以外の部位がどれだけマシになるか、という具合
なのでそこにモーガン・フリーマンとボブ・ホスキンスが居るだけでだいたいOK。

 いわば率のない人選で「殺人ファイターが人間の心を取り戻す」という、わりと
王道パターンの脚本に色調を抑えた画を貼りつけたらホイ完成。

 ただリー師父のセリフを削るために考えたのではないかと思うこのダニーという、
純真さがウリの役どころは、さすがに不惑の年を越えた師父にはややキツい
というのが正直な感想。

 それでもまあ、その格闘部の美しい動きに胸踊るので。目的はほぼそれなので。
長物も持つのでそれで大満足。

 特にラスト、見せ場が狭所での殴り合いという素晴らしいシークエンスを堪能したら
ピアノが物語の鍵になってるのに、音楽がマッシヴ・アタックという節操のなさとかは
あんまり気にならなくなるので。

 もろもろ粗いなりにまとまってはいるので後感は悪くない、程度なんだけれども、
カンフー属性のある人は+1で楽しめるんではないかと。

(2005 07/08)
監督:ジョセフ・ルーベン
ジュリアン・ムーア主演のミステリー・スリラー。監督は『マネー・トレイン』とかの人。

 やりたい事は良くわかるんだけど、そこに到っていない。
具体的に言うとシャマラン的なテーマのすり替えが起こるんだけれども 、
ガッチリとは来ない、かと言って『ゲーム』(フィンチャーのね)ほどのビッグなオチ
が待ちうけてるわけでも、『ドリームキャッチャー』 のような偶然が呼んだ奇蹟が
起こってるわけでもない。

 そこら辺で、もう1歩及ばないの感はあるのだけれども、
予告でも見られるあのシーンのインパクトだけは他の追随を許さない。

 そういう前振りの長いコントだと思うと、たまらなく楽しくなるのだけれども。

 終盤までの「不可解さ」加減の演出が良くもなく、悪くもなく、ただひょっとすると
この人の妄想なんではないかと思わせるジュリアン・ムーアの狂気の演技が
なかなか緊張感を切らさないので飽きることはない。

 90分強という長すぎない仕上りで、無理に詰めこみ過ぎずに広げすぎずに
それでいて強引に軽く畳んでるので余韻みたいなものは(この手の作品だと
必ずある変な後引きみたいなもの)があんまりないので物足りない事は物足りないけど
それなりに無難な作りではあるなあ、とか。

 んー、でも免疫ないと豆鉄砲食らった状態になりそうな感じもする。
とりあえず無難じゃないなりに無難だというか。

 トンデモ系には違いないけど、その度合としては普通というか。

(2005 07/08)
監督:ブレック・アイズナー
 パラマウントが1億3000万ドルの巨額を投じて、わりと失敗気味のトレジャー・
アドベンチャー大作。監督はマイケル・アイズナーの息子。

 割と前情報だけだとイヤな要素しかなかったんだけど、それだからかもしんないけど、
この映画、普通に面白いんだけれどもどうしたものか。

 まず歴史超大作ばりの予算が何処に使われてるかがサッパリなんだけれども、
きっと経理の人が頭悪かったんだろうとかそういう感じで流しとこう、それは。
ものすごい高いラクダをブッキングしたとかそういう感じで。

 残虐テイスト+軽いノリが割と上手いこと噛み合ってて、重いとこはトンと落として
あとはけっこうウィットに進めて行くので見てて飽きない。
特にスティーブ・ザーン演じるアルのポジションが秀逸で、暑苦しいマシュー&
ペネロペを見事に中和してるというか、この3名つのが何かキッチリ収まってる感が。
華がないならないなりに。

 あんまアクションの撮り方が上手くないのだけがちょっと気になった。

 ストーリーラインは原作ありきなので、、それなりに
まとまっていくので大きな脱線なく、わりと丁寧な起承転結。

 ちょっと終盤、発破の度合いが激しくなるけどそこら辺はむしろ歓迎というか、
何かこうざっくりアメリカンテイストで、イヤッホーいいながらダイナマイト投げる
映画って平和ボケの境地で素敵だなあとかそういう感慨。

 あとウィリアム・H・メイシーは見てるだけで割と和むのでそこら辺が大きな勝因。

 見終わって、あーおもろかった、でスパーンと抜ける映画なんだけど、
こうストレートにこられるとけっこう心地良い。

(2005 07/02)
監督:クリス・ケンティス
昨年のサンダンスで話題を集めた海洋シチュエーションホラー。

 変化球かと思ってたんだけど、もんすごい直球だった。

 もうプロット通りの海の真中に置き去りにされたら怖いよね、てそのまま。
ただそのままなんだけれども、そのままで十分怖いので、なるほどと。

 手持ちのビデオ撮りの画像、クローズアップの多用等、映像の稚拙感が
妙なリアリティを増すのはブレア・ウィッチと同じで、そこら辺の気持ち悪さが
良く出てる。

 序盤のいわゆる「置き去りにされるまで」というのが無駄に長くて、そして如何にも
インディーズ感溢れるカットワークでちょっと辟易してしまうんだけれども、まあここら辺
の退屈さ加減もプロローグの内だと、観賞後には飲みこめてしまった。

 で、まあ海上二人ゆらりぷかりとダラダラ続くわけですが、水面の変化を撮る
だけでそれなりに絵面としては動感溢れるので画的には悪くないなあ、と。

 ただ中盤以降ずーっとそれなので見入ってると酔った。

 極限状況の人間のとりとめのなさとかとても良く描けてて、とり立てて感動的な
表現はないのだけれども、そのどうでもいい間とかが変な緊迫感を醸し出してて
良いなあと。

 締め方も個人的には意外だったのだけれど、なるほど印象深くはなるなあ、と。
 
(2005 07/2)
監督:スティーブン・スピルバーグ
 H.G.ウェルズの1898年の原作を約半世紀ぶりに映画化。主演・製作にトム・クルーズ。
共演にダコタ・ファニング。

 スピ先生がやってくれた。 

 スピ先生が地球を侵略しようとしている宇宙人でなくて本当に良かったと思った。

 とにかく容赦なく次々とカタルシスを叩きこむ。逃げ込んだ先にも希望はない。
むしろ別の狂気が待ち構えていたりする。見えない恐怖、見せない不気味さ、
どうしようもないパニック状態、そこら辺の胸を突き動かす数々の演出を浴びて
ああ、やっぱりスピルバーグ監督というのは天才であるとあらためて痛感する以外にない。

 原作がある訳で、おおむねストーリーラインは理解されてるというか、オチが既に
自明な状態なのでそこら辺にこだわる必要性はない、と踏んだ感じで、とにかく
いかにR指定にならないように大虐殺を見せるかを、考えに考え抜いた無数の
アイデアにウロコが落ちる。というかむしろ戦慄を覚える。
ここら辺の心臓に直に来るゾクゾク感がたまらない。

 レイチェルが川で見てしまうシーンとか、レイチェルに目隠しをして
耳をふさいで子守唄を歌わせとくところとか、歴史に残したい名シーン。
その一シークエンスごとの完成度の高さが異様。

 も一つ個人的にグッと来たのが、これ怪獣映画なんすな。
トライポッドを捉えるアングルがもう完全に。逃げ惑う人々も。
昨今これだけ金かけた大規模なデストロイ描写はなかなか見れないと
思うので、それを大スクリーンで堪能するだけで十分価値があると思った。

 そして主演ながら前に出すぎない今作のトム・クルーズは秀逸。
ダメ親父を徹底して貫き、決してヒーロー化しないもの良い。

 息子役のジャスティン・チャットウィンの朴訥としつつも芯の通った感じ、
ダコタ・ファニングも物語の中にきっちりと埋めこまれて観客席への恐怖の
媒介としてとても良く機能している。

 あとティム・ロビンスがわりと最高。

 後感に、爽快さとか感動とかはほぼ皆無なのだけれども、
カタルシスの満腹中枢は危険区域に達してるので、何か脳のどっかで
変な感情の引き出しが開くような感じ。いわゆる不謹慎な高揚感。

 でもとりあえず大好き。

(2005 06/30)
監督:本広克行
『踊る大捜査線』からのスピンオフ企画。ユースケ・サンタマリア主演。監督はもちろん
同シリーズを手掛ける本広克行氏。同じくいつも脚本を手掛ける君塚良一氏は
同年公開の『容疑者 室井慎次』 で監督・脚本をこなすために原案まで引いての布陣。

 このシリーズに関してはわりともう何をやっても構わない、
という亀山Pの全幅の信頼を感じた一本。

 いやある程度好きに作ってるなあというか。余裕というか。
よくある感じの無理矢理話題性を狙ったキャスティングとかが
あまり感じないあたりとか。唯一、西村雅彦だけが微妙に浮いてたけど。

 まあとにかく毎度ながらサスペンスな側面はさて置いて、な展開で
色々な要素をはらむんだけれども、上手いこと収束していくわけでなく、何かこう
単発的に起こる事象に対する各キャラクタの反応なり対応なりを楽しむという作り。

 なので謎解き要素を期待すると辛いかもしれない。あと交渉術的な面白さも
あんまり感じられないので、 ただただオッサン達のキャラクタを楽しむ仕様。

 おおまかには密室劇で、主に地下鉄の本部をベースに話が展開するのだけど
相変らずカメラワークは秀逸のなので、目が退屈することはあまりなく、テンポ良く
進んでいくのはさすが。

  ただラストのほう、音楽に乗せてクライマックスを高めていくのだけれども、
も一つここにスピード感と、ないしは音楽のみでその他の音を切ってしまう潔さ
が欲しかった。そのカラスを使った誇張がハトの監督を彷彿とさせたのだけれども、
その繋がりでオーバー・ザ・レインボーのバックに無音の銃撃戦とかあそこら辺の
ボルテージが欲しかったというか。

 またラヴェルのボレロという徐々に徐々に上げていく素材なだけに、ちょっと
もったいないなあと。

 場面展開の時の「遠景(たまに空撮)+ソプラノ気味の女性声が乗ったストリングス+
一文字ごとに不規則な直線運動で現れる時間と場所のテロップ」とまんま
スコット・フリー作品なシークエンスはちょっとなあ。でも作品の雰囲気に
ハマってる事はハマってるので、引用も方便というか。

 そこら辺はともかく、これだけの華のない要素を渋く、それでいて「踊る」に
仕上げて一つ完成しているのはなかなか素敵だとは思った。

 とにかく役者と絵面だけはきちんと映えていればなんとかなるという好例。

(2005 06/28)
監督:ジョージ・ルーカス
新三部作の完結編であり、また約30年に渡ったサーガの完結編。

 タイトルバックの余韻さめやらぬまま、パルパティーン救出のシークエンスから
始まる序盤のボルテージの高さが異様でこれは今回は何か凄いモノになるんで
はないかと思えば、割とそうでもなく、中盤ダルいので、どうにも手放しでバンザイ
という感じではなかったという後感。

 作品として、見る人は絶対見るんだろうけど、見る前提のない人も見てしまう可能性
があるんでそういう人(今作だけなんとなく、とか)は見ないほうがいいんではないかと
思うぐらいの、予備知識が必要なモノになってしまっているなあ、と。

 何を今更ではあるんだけれども。

 タイトル後のいつものプロローグで議長がさらわれてる状況をまるごと説明で
乗り切る大胆さが心地良くて、コミカルさが秀逸なR2の大活躍、ドゥークー戦から
着陸までのテンポの良さというのが印象深いのだけれど、これ以降アクション部と
それ以外の配分がけっこう悪い。

 特に、もうこれは前作から散々言われて来てるのだけれども、アナキンとパドメの
やりとりは見ているのがけっこう苦痛なぐらいにつまらないわけで、これこそ全部
テロップにしてはどうかと思う勢い。ないしはC3POが全部説明するとか。

 中盤のヤマ場はグリーバスVSオビ=ワンの見所はずばりボーガの声。
オビ=ワンの乗っかる大きなトカゲなんですがこれの声が秀逸。動きも可愛い。

 以降タイトルと寸分違わずシスの復讐がはじまるのですが、ジェノサイド描写は
割と控えめというか、ジェダイて結構弱いんじゃないかと思うような適当さ加減は
なんとかならんかったのかと。後ろから撃たれるとか。サミュエルはきちんと
ルーカスに「死に際は見せ場をつくって欲しい」と懇願したらしいけれども、
それがなかったら適当に撃たれて死んでたんではないかと。

 ここからクライマックスでなかなか豪快なアクションがありーの、だいたい予想
していた結末がありーので、あーなんか終わったなあ、という変な感慨はあるんだけど
これ一作品としての感想としてはまあそれなり。

 ただ映像とその世界観の圧倒さに酔えるならそれだけでもいいとは思う。
 
 んでも劇中にタイトルバックを超える高揚感てのは個人的にはなかったし、
それを求めていたので、帰路で色々考えこむ結果に。

(2005 06/26)
監督:クリストファー・ノーラン
『バットマン&ロビン』から8年経っての新作バットマン映画。題材は「はじまり」
監督は『メメント』 のクリストファー・ノーラン、バットマンはクリスチャン・ベイル、
共演にマイケル・ケイン、リーアム・ニーソン、ゲイリー・オールドマン等渋いオッサン満載。

 まずタイトルのタイミングが最高で、ちょっと泣いた。全ての意図を集約したタイミング。

 作品そのものが高揚感を持続させる訳でなく、見た後にワーっとなる訳でもない、
それでもじわじわ来る。これがクリストファー・ノーラン的で、いわゆる地味演出の境地。
わびさびバットマンと言えばわかってもらえるだろうか?(わかりません)

あとも一つ、同監督、今までの2作品にもあるように「幻覚」描写にはちょっと
自信がある感じがするんだけれども、まさに今回もその演出が後半大活躍するんで、
そこらへんも独特。だけど馬の鼻から火は笑うけどな。

 悪い要素を挙げると、基本的にアクションがほぼ撮れてないに等しいのと、
あと後半の展開がわかりにくい(水道菅とウェインビルの位置関係とか、マイクロ派兵器
の威力とか)もろもろあるんだけど、作品を貫く雰囲気は揺るがないのでそこら辺の
ディティールの粗さはテンポの為に犠牲になっても構わんかなあ、と。

 とにかくナイスミドル勢の趣がありすぎで、その端役のトム・ウィルキンソンとか
ルトガー・ハウアー、渡辺謙も含めてすばらしき中年の世界。
 
 あと若者勢ではキリアン・マーフィの目が開きすぎの逝き具合もかなり良い。

 共同脚本がデイヴィッド・S・ゴイヤー(ブレイドシリーズの大元みたいな。3作目では
自分で監督してやや失敗みたいな)なのでバットマンというキャラクタが如何にあるべき
かをその歴史から自分の理想のようなものを確固として持っているわけで、そこら辺
ノーラン監督の渋さとガッチリ来たのが成功してるんではないかと思う。

 ボルテージの高い見所としてはバット・モービルのマッシブ加減に勝るもの
はないんだけど、大暴走の後でブルース・ウェインがアルフレッドに諌められる
シーンとかがとてつもなく好き。

 あと「救援は?」「誰もいない?」の後ろを駆け抜けて行くところで鳥肌立った、
ヒーロー映画で必ずないといけない場面だと思う。
両手を上げたくなるような登場シーンて。

 音がかなり良い具合で舞うので、これは是非劇場で。
 
(2005 06/23)
監督:手塚昌明
1979年の角川映画をリ・イマジネーションとか適当な言葉を使ってリメイク。
故半村氏の原作のプロットだけひっこいぬいて福井晴敏氏が原作として再構築。

 いやもう人間撮れてない事この上ない。なんつかゴジラの時はゴジラだったから
ゴジラが見れたら割と皆の溜飲が下がるのだけれども、さすがにこれはキツいと思った。

 斜め前に座ってたオッサンが「二度と日本映画なんぞ見るか」と言い残して
半分ぐらいで帰った気持ちがわからないでもないと思えるぐらい。

 全てのカットワークがどうにもコント的に見えてしまうぐらいダサダサで、むしろ
新鮮ではあるのだけれども。テンポも悪いので致命的。序盤、江口洋介を説得
するためにアレが現れた時は、やばい10年後に伝説のカルトと呼ばれる作品が
今、目の前で展開されてる!的高揚感はあったのだけれども、その後はネガティブ
方面へのすっ飛ばしもあんまりなく、やっぱどうしようもない。

 歴史の復元力によってつじつまが合ってくる、というウロコが落ちるはずのプロットが
うまいこと消化しきれてないのもわりと残念。

その後半に色々と犠牲が出るのですが、どう考えてもあなた今死ななくていいですよ、
という人が「いいから先に行け」的展開で死なれてもグッとこないわけですよ。

 ましてや家族写真だなんて小学生にでもわかる死亡フラグはもうちょっと上手く
使ってほしいわけですよ。そういう見え見えのキャラクタを殺すならもう少し観客を
「ひょっとしてこの人助かるんじゃないの?」て思わせる悪辣さが欲しいとか贅沢ですか?

 で、結果的に北村一輝氏とデスラーが異様なまでに輝いているのと、変なプロダクション
デザイン、もろもろの特撮演出は光るのでそこら辺目当てになんとかなる人には
とりあえず見れるのでは。

(2005 06/23)
監督:富野由悠季

20年前のTVシリーズ総集編を3部作で構成。
TV版の映像と新作カットを交えて紡ぐなかなかの力技。


 見ない人はどうせっついても見ないだろうし、見る人はほっといても見に行く
作品だと思うので、一つ言うとすれば見ようかどうか迷ってる人は見といたほうが
いいんではないかと思った次第で。おそらく後悔する事はとりあえずないだろうと。

 これだけ作品に本人の色が浮き出る作家が、一つのビッグ・タイトルとセットでしか
評価されないのがどうにも不思議というか、まあそれもそれなんだろうとかいろいろ。
いやザンボットもダンバインもキングゲイナーも素晴らしいんですが。絶対的なものとして。

 置いといて、毎度ながらこの「収集がつかなくなってるのに何かが収束している」感が
たまらないというか。脳の色々なところが開きます、マジで。
序盤のグリーン・ノア外での戦闘でもう当てられた。

 旧カットをベースにして新カットをはさんでいく手法も巧妙で、終盤にかけて新カットの
比率が増していくのでラストのアッシマー戦あたりのボルテージでもうだいたい序盤
のショボい旧作カットも脳内美化されているような気がする勢い。

  あとダイジェスト感は確かにあるんだけど、主な構成の60%ぐらいが戦闘なので
なにかそこら辺だけでだいたい満足感があるというか。それほど大きな山もなく
完璧なまでの「続く!」で終わるんだけれども後感はとてつもなく良かった。

 シャアとアムロが邂逅するところのバックで御大の頭から発せられた
光りが劇場内を完全に包み込んだあたりがたぶんポイントだと。

 そゆ事で素養のある人は異様な高揚感に見舞われること間違いなし。

(2005 06/14)
監督:鈴木清順
故・木村恵吾監督が作った狸御殿シリーズをだいたい70年ぐらい経た今、リメイク。
主演にチャン・ツィイーとオダギリ・ジョーというキャスティングから何から奇抜気味。

 まず心地良いタイトルバックであーいいなと思ってたのだけど「脚本:浦沢義雄」
で吹いた。個人的なイメージがカーレンジャーとかしかないので。あ、あとデジモンの
主に話が意味不明寸前の時の脚本がだいたい浦沢氏だった気が。

 ま、それこれは全部置いといて、この映画、想像を絶する不可解さで私に
襲いかかって来て途中でわりともういいやと思った事も2度3度。
よもやここまでとは思わなかったけど浦沢氏のリミッターを外すとこうなるのか、と。

 で、面白いかどうかと聞かれたら、つまんないと即答出来るんだけれども
どうにもそれだけでは終わらないというかも少し見方をかえてストレンジ・ミュージカル
だと思えばそれなりにギリギリ消化出来る感じ。

 なにかこう予想の範疇を遥かに凌駕してたので、そこら辺で自分の中で
うまいこと処理できなかったのかもしれない、と一生懸命フォローしたくなるのは
何かコレがコレであるのがわりと完成しているからだと。

 いにしえの狸御殿モノの持つ雰囲気というのがこれであるなら、リメイクとしては
完成しているんであって、それを堪能してきた世代には一級のリメイクと言うか現代
アレンジを加えたパロディとして成立してるんかな、と。

 とにかく久しぶりに面食らった感はあるんでそこら辺すごいのかも知んない。

(2005 06/13)
監督:ウェス・アンダーソン
ウェス・アンダーソン監督長編4作目。相棒オーウェン・ウィルソン筆頭に、ビル・マーレイ
ケイト・ブランシェット、ウィレム・デフォーらキャストに加え、劇中アニメーションは
ヘンリー・セリックとスタッフも豪華に送る海洋ドラマ。

 とにかく音楽の鳴らすポイントというのが完璧に近くて、序盤のスティーヴが
甲板に出て煙草吸うシーンとかなんでもないのにズガーンと来るからすげえ。

 その後も要所要所でグッと締めてEDロールもそのボルテージなので
決して後感は悪くない。後感は。

 というのもどうにも中盤以降は、これもでもいつものウェスの映画の感覚では
あるのだけれども、ちょっとこさダルいというか。ちょっとあくびが出るのんびり加減。
全編通すと魅力の一貫にならないこともないんだけれども、あそこら辺がも少し
スムースに展開するとちょっと圧倒的になってくるというか。

 もうそれでも映画祭から始まる序盤、スティーブに振りまわされる中盤、
そしていつもの優しさ加減が爆発する終盤、どこのシークエンスを取っても
一本の映画にまとまるとは思えない要素をあっさりとまとめつつ、そしてその
独特のどうしようもない人間達を柔らかい空気で包み込む手法、それに加えて
今回はヘンリー・セリックが手掛けたクリーチャー達も作品の一部に融合させて
わりとこの上ない完成度。

 役者陣の溶け込み具合ももちろん素晴らしいのですが、やはりビル・マーレイの
飄々としたイヤなオッサンぶりがもはや国宝の領域で、この作品の鍵はそこに
尽きるとも思えてくるわけで。

 何にせよ前作より一つ上の段階で攻めてきた感はビシビシ来るので、
とにかく行けるとこまで行ってください的。

(2005 06/14)
監督:ロブ・ボウマン
『デアデビル』のヒロインをスピンオフ。主演は元作品と同じくジェニファー・ガーナー。
監督は『X-ファイル・ザ・ムービー』『サラマンダー』 のロブ・ボウマン。

 キルステン・プラウトが可愛いからだいたいOKということでどうだ!(何が)

ボウマン監督は気づいたんだわ、そのこの赤いボンテージのしかめっ面が似合う
正ヒロインだけではどうしようもない、と。なんとなくどうしようもない、と。

 そこで補強されたのが15歳(劇中では13歳)のぽってり顔の美少女。
なんの事前知識もなく観賞してたので、中盤以降はフェード・アウトかな、
と思ってたら意外や大活躍。わりとダブル・ヒロイン気味。

 そゆことでそこら辺でまあいいや、と思えた。

 あとの大きな流れは良い忍者悪い忍者がいて忍者は死ぬと緑色に爆散する
という謎の忍者知識がわかったりとかそういう感じ。忍者すごいな、とか。

 中盤以降は、ウィル・ユン・リー演じるキリギ率いる超軍団との闘いがメイン。
ボブ・サップは10分ぐらいでスクリーン上からいなくなるのはだいたい予想の
範囲として、タトゥーという体中の動物の刺青を具現化して闘う超忍者がいるのですが、
このエフェクトがかなり格好良いのがちょっと楽しい気分に。

 それに関わらず細かいエフェクト、忍者の動きとかはスピード感あってけっこう
映像的に心地良く作られていて、そこら辺は単純にイロモノに終わらないというか。
あとスーパーヒーローものとしての画を、それなりにきちんと作ろうとしてる努力は
伝わって来るので、アクション部に関してはそれなりに見れる。

 他の部分はかなり無駄な演出が多いんだけれども、まあ脚本自体が
どうにかしてどうにかなるレベルのもんでもないから。

 まあでもキルステン・プラウトが可愛いからだいたいOKということで。

(2005 06/09)
監督:冨樫森
横山光輝原作の巨大ロボット漫画の原点ともいえる作品を実写映画化。
正太郎役には『ラスト・サムライ』 にも出演している池松壮亮。

 序盤の展開がまだるっこしいのはこれは監督の間なんだろうなあ、とそんなに
退屈はしなかったのだけれども、終盤にかけてもずーっとその演出なので
さすがにちょっとダルいと。もう終盤のテンポの悪さとかはどうしようもなかった。
最後の方とかセリフが会話になってなかった気がするし。

 既存の鉄人のイメージ(初代、太陽の使者、FX、今川版と各アニメ作品の)
に捕われることなく21世紀「現代」として物語は進行している、
はずなんだけど風鈴屋だとか、あと鉄人が居る工場、警察署のプロダクション
デザインが微妙に「昭和」。なのにホームページがハッキングとか
そういう要素をさっくり盛り込んでしまうわけで世界観がも一つ統一し切れてない。

 おそらくアナザーワールドな21世紀の日本的仕様な気がしないでもないのだけれど
そこまで突っ切ってないんで、どうにもしっくりこない。正太郎のスーツ姿だけが
変に浮いてる感じに。

 序盤のホームドラマの展開からブラックオックスが登場するところまでは
前述の通り、そんなに悪いもんでもないよなあ、とか思ってたわけですよ。
特にブラックオックス大暴れのシークエンスは、怯える蛍雪次朗から始まって
ガイラを彷彿とさせる屋上のシーン等々なかなかツボを抑えた怪獣映画が
展開されるんで、そのツルツルの質感もまあありなんじゃないか、とかそれぐらいの
勢いで。

 全編通して、各ロボットの造型つのは予告とかで見た通りにツルツルマシーン
なのですけれども、特撮部で特筆すべきはそこでなくて破壊描写にあります。
とにかく建物の壊れっぷりがなかなかすばらしい、建物内からのアングルで
部屋がふっとぶ感じとかがその本編のヌルい展開に対してかなり激しめ。
あと特技監督はきっと車が嫌いなんだ、と思うぐらい車が吹き飛びまくって
潰れまくるのがとても印象深い作品。

 中盤、突然美少女博士を投入しておきながらあんまりキャラクタが生かせて
なかったり、正太郎が父から鉄人を託された理由の描写が全くなかったり、
改良型が「鉄人のダメージがそのまま正太郎に伝わる」というネガティブな
フィードバックを搭載した改悪型だったり、とにかくグデグデになって行って
くわけですが、キッズムービーとしても華がない(無駄にリアルなロボット
モーションでポコポコ殴り合うから) わけでけっこう消化不良。

 ストーリーとしては一本通ってるんで、ディティールが粗いのはまあツッコミどころ
として楽しめるんだけれどもテンポが悪いのがおそらく個人的には致命的。

(2005 04/08)
監督:ジョン・タートルトーブ
ブラッカイマー製作のトレジャーハンティング映画。主演はニコラス・ケイジ、
共演にダイアン・クルーガー、ジャスティン・バーサ、ショーン・ビーン。

 この作品にとってカイマー的な要素、つまり豪華キャストとか大きな予算とか
似非ジマー節とかは個人的にはまったく必要ない要素で、むしろ地味な謎解きの
面白さをかすませてしまうわけで、これはちょっと逆効果なんではないかと。

 見終わって気づいたんだけど、このトレジャーハント映画はファンタジー要素が
皆無で、その呪いやら聖なるなんたらやら、普通に考えてありえないレベルのもの
は出てこない。とにかくそのリアルな(ない事はない、という程度では
あるけれども)現代の宝探し映画なのですよ。しかもほぼ米国内で展開される。

 だからジャンジャカ音楽が鳴ってても大玉が転がってきたり大鉈が飛んできて
首が飛んだりするわけでもないのでここら辺がなんかバランスが悪い。
その盛り上げどころだけでなく、序盤からスケール感がけっこう狂ってるわけで。

 どう考えても一枚絵とモノローグで済むような映像、古代エジプトとか独立戦争の
戦場をたった10秒ほどの為にわざわざ映像化する冒頭の無駄な大作感を煽る映像が
それ以降の展開とはどうにも一環した映画の感覚として繋がらない。

 ただ、話の展開に関しては非常にテンポ良く、ややセリフが多いながらも
一つ一つ順に紐解かれて行くんで、これといって退屈しないあたりの最低限の
ラインを保ってくるのもカイマー的。120分超でありながらそれを感じさせないのは
監督の職人芸の賜物だと感じる。

  ショーン・ビーン、ハーヴェイ・カイテル、ジョン・ボイトといった地味なオッサン勢
の渋めの脇がそれなりに光ってるので、もうこれはキーラ・ナイトレイ
を無理矢理ねじ込んで中和した感じに。あのポジションもオッサンだったら
この映画かなり良い感じになってたと思うんだけれども。

 映像的には、一部エフェクトばりばりだったりするんだけれども基本的には普通。
最終的な調整の段階で最大公約数をとった感じの出来になってるというか。

(2005 04/03)
監督:ミシェル・ゴンドリー
チャーリー・カウフマン脚本・製作のラブ・ストーリー。2004年度アカデミー賞脚本賞受賞。
出演はジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット。

 間違いなく面白い。そしてこの観賞後のサラサラ感が溜まらなく心地良い。
激しい抑揚があるわけでもなく、けっこう淡々としているのだけれども、その
主人公の脳内でほぼ展開される観念的なストーリーを、きっちり映像が抑え
こんでる感じがした。

 スパイク・ジョーンズだとも少し濃度が上がるんだけれども、ミシェル・ゴンドリーは
割と素直に脚本を具現化しているというか。アクがないぶん、それを退屈と感じるか
心地良いと感じるかは個体差があるだろうなあ、とか。

  「記憶」の映像感が卓越してて、感覚的に「夢」に近い。
その脈絡がないんだけれども空間は繋がってる描写とかは
実際に夢の中に居るようだった。けっこう中盤の描写がそういうのばっかりで
良い具合に脳内が昏睡気味になって来るあたりで、そこでまたきちんと引き締まりつつ、
も一つのエピソードが挟みつつ、収束へと向かっていく。

 話の作り方はやっぱり頭一つ抜けて卓越している。

 各役者のポジションも適材適所で、抑えた感じのジム・キャリーに
荒れているように見えて繊細な感じをケイト・ウィンスレットもこの上なく好演。

 ただやっぱりキルスティンの顔は怖い。終盤に向けて本当に怖い。

 もうコテコテの作りで、途中から見えてくるんだけれども、それでもあの
アヴァンタイトルのゆったりした作りが中盤以降輝き出すのが何よりも素晴らしいと。

 そこで終われば一つ綺麗に終わるんだけれども、も一つ噛ましてくるところも
ちょっとグっと来た。あくまで定石通りには収めない、それでもまとまっていく。

 もうすいません。この映画大好きです。
 
(2005 3/31)
監督:早田英志
アンドリュー・モリナ
コロンビアでエメラルド関連のビジネスで大成功を収めた早田英志さんの自伝。

 どうしたもんかコレ。まあ大まかなジャンル分けをすると「ユニバG物語」と
同じ系列の映画だとそういう感じでOK。ただね、ハヤタさんは普通のオッサン
なので画面的にはまあ、なんつーか、そのね…。

 とりあえずどこから突っ込んでいいかわからなくなって、まあいいか、と思わせる
作戦なのではないかとやや思ったりも。

 ちょっと説明すると、大金持ちのハヤタさんが自腹で監督とかスタッフとかキャストを雇って
撮った「劇映画パート」と、実際のハヤタさんが追撮した「自主製作パート」があるわけ
ですこの映画。流れを説明すると「自主」→「劇」→「自主」という流れ。

 ま、冒頭ちょっと見せて回想に入るんだわ。そっからのその「劇映画」部分は
撮影もきちんとしてて役者もきちんと演技をしている。あー、割と普通だなあ、と
思ってみてたら、話が普通につまらないので、ドキドキしてきます。

 ハヤタ役の人がピンチ→なんとかなる→飯を食う→またピンチ→なんとかなる
→飯を食う→普通に生活飯を食う…とそんな感じ。

 無駄に食卓を囲むシーンが多いのは、脚本のハヤタさんが間を持たすには
主に食事シーンという独自の手法を用いるからだとすぐ解りました。

 撮影、編集、演技とも本当に普通に問題ないのだけれども、もう脚本の適当さ
があまりにも光りまくり。特に「何か起こりそうな」シークエンスを振っておいて
「何も起こらない」という驚異の展開が二度三度。

 で、この劇映画パート、途中から画質がドンと落ちるんです、おそらく16mmないしは
ビデオ撮りかそこら辺の画質。あとライティングがほぼなくなる。(ちなみに自主パートは
ライティング皆無でビデオ撮り、しかもカメラ手持ち)

 たぶんここら辺で監督とか撮影スタッフが抜けたと思うんですわ。んで役者だけで
撮り続けたパートがそこら辺だと。

 んでまあ、ハヤタさん本人パートに戻って、もう割と何がしたいのか良くわからないけど
ハヤタさんが全部正しい展開。それを金払って見せられる我々。
何かね、そのまるごとを含めての不条理感が空間アートとして新しいな、
とコレ映画の感想じゃねえな。

 どっか出力する場所がある人はネタとしてはまあアリ。
 
 最後に字幕でハヤタさんが「銃撃されて意識不明」とか出るんだけど
普通にピンピンしてるあたりがこの映画の全てだと思った。

 広義でファンタジー。

(2005 3/31)
監督:ジャン・ピエール・ジュネ
同監督長編5作目は『アメリ』スタッフ&同主演のオドレイ・トトゥで描く、
第1次大戦中をテーマにした恋愛物語。原作はセバスチャン・ジャプリゾのベストセラー

 上手いことごまかせばR指定なんて食らわないような素材を、敢えて指定が
かかっても己の表現を優先する力加減、というかジュネ監督の特徴は
リリカル残酷なのでこの部分を削いでしまうと魅力は半減するわけで。

 『アメリ』 の時はなぜかその「残酷」部があんまり前に出なかったのだけれども
今回の冒頭の戦争描写における殺伐さ加減が割と突出していて、あー、やっぱ
これでないとなーと普通にちょっと湧いた。あとギロチンとか。

 ただ文芸作品を自分の映像できちんと消化して、綺麗に収めてあるので
そこら辺の着地加減がちょっと寂しかったりもするんだけれども、これはこれ。
ショットそのものの奇抜さを魅せるやり方も減って来ていて、長回しとかは使いつつも
受ける感じはだいぶんストイック。そこら辺にはあんまり気を取られない。

 ライティングがちょっとコントラストきつめなのぐらいかなあ。目に見て特化してたのは。

 深刻な物語なのに端々のシークエンスのリリカルさが重くなり過ぎずに
話を進めて行くので細かくほわほわしながら「サスペンス」部に引きこまれていく
わけです。毎度ながら話の組み方が巧妙で、途中で何度か見てるほうが筋を
見失いそうになって、これはきちんとまとまるんだろうかと心配になるんだけれども、
見事に綺麗に収まっているので、もう何も言えないというか。

 完全に別ラインとして展開されるティナのシークエンスとかがきっちり
収まって来るあたりがぞわぞわしました。んで時計を受け取るシーンでちょっと泣けた。

 この全編に溢れる作家性というかクセが合うか合わないか、てのが多分に
してあると思うんですが、まさにこれこそジュネしか撮れない映画、という感が
たまらなく心地良いです個人的に。役者陣もいつものドミニク・ピノンはじめ
皆、味ありすぎ。

(2005 03/19)
監督:ポール・グリーングラス
 前作から2年、再び全米大ヒット続編。前作の監督、ダグ・リーマンは
製作の位置まで引いて、ポール・グリングラス監督にバトンタッチ。
主演はもちろんマット・デイモン。

  まさに続編というか、これ以上の続編はないだろうと思えるぐらいの完璧な続編。
前作の「地味さ」を作品の雰囲気として根付かせることに成功していて、これが
何よりもこの作品の「色」になってるのが素晴らしいなあ、と。
 
 アクションなのに華がない、なのにこんなに面白い、という感じ。

 アクション、カーチェイス、スパイ映画的要素をきちんと盛り込みつつもイロモノに
ならずにあくまで渋く収めてあるってのが後感として、感動するところなんだけど、
弊害としてスチルとか宣伝時のイメージがどうしても地味になるんで、ここら辺で
損してるんではないかなー、と勝手に。

 全体の感覚を統一しながらも、見せる場面によってきちんとカットの割り方とか
テンポを変えているあたりも巧妙で、特にスパイ的行動に出るシークエンスの
緊迫感溢れるカットワーク、ボーンがパメラ・ランディの宿泊先を見つけるシーンとか
そこら辺の流れの心踊る作りには唸るばかり。

 一つ一つ紐解いて、で、クライマックスがそれなりに度を越したカーチェイス。
これがかなり激しいのだけれども、そのアクションが飽和して笑ってしまうような
事はまったくなく緊迫感を保ったまま展開していくのが何よりも見所。

 大きな流れで斬新なギミックがあるわけではないんだけれども、ディティールが
かなり心地良い異色スパイ系(話は「追われつつ真実を探る」という展開なので
一概にカテゴライズすんのはなんだけど)作品。後感は前作とほぼ同じ。

 マット・デイモンのハマり役感はかなり溢れてきた。

 あとEDがまたMobyなのでそこら辺の変なこだわりも良いなあ、と。

(2005 03/19)
監督:細田守
 『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム』以来の細田守監督劇場版長編。
単品作品としては初。ワンピースの劇場版は第6弾。

 序盤の「金魚すくい」までのノリの素晴らしさがでもう完全に湧いてたのだけど、
その後のダークな展開に観賞中は上手いこと切替が出来なかったのと、ラストの
カタルシスがあんまり大きくないので、も一つ嬉嬉として劇場を出られなかったのだけど
思い出すともうなんつー素敵な作品なんだろうと、そういう感じで余韻が深い。
 
 ただ一つ残念なのはEDロールで、ここでいつも細田映画の後感がこの上ない
ものになるんだけれども普通に黒バックにクレジットが上がるだけだった。

 ゲストキャラのオッサン達が最後あまりにも熱く、そしてグロすぎて黒いフィルタが
かけられてしまった最後の敵の最期、そして「花」と言い切って何の説明もない
あたりの不条理加減、どこを取ってもお子様には素晴らしい原体験間違いなし。

 それでもワンピースの持つ原作の感ってのはきっちり抑えてるんではないだろかと、
特に序盤のギャグの間とか船長のキャラクタとか。

 アニメーションとしての動きの楽しさを盛り込みながら3Dも駆使して、最低限の
違和感に抑えてあるあたりも秀逸。作画に関してはもうなんら問題ないというか、
女性キャラクタの色気の加減とかが異様。そしてゲストキャラを使ってまで
少女崇拝に拘る監督の執着に感動。前提としては「家族の絆」ですが。

 原作の枠、劇場版的な壮大感、それを最低限踏まえた上でも
演出の個性を失わずに、自分の描きたいものを描ききってる、という感じ。

 根底的な物語の流れはきちんと組まれてるのであとは
見る人間の前提とか嗜好とかによって、評価は分かれるだろうなあ。

(2005 03/10)
監督:ベニー・チャン
 香港での製作作品は『アクシデンタル・スパイ』以来3年ぶりになる成龍作品。
またこの作品からジャッキー・チェン・エンペラー(JCE)というレーベルもスタート。
自ら皇帝を名乗りだした御大の次の演舞が幕を開ける。

  成龍の余裕が生み出した快作。いつもと違ってストーリーはヘビー気味では
あるのだけれど何かこう、ここ最近のジャッキー映画ではありえないような余裕
を感じられる。「こんぐらいは出来るんよ」みたいな。
抑えつつも『インファナル・アフェア』 への対抗意識つのがビシビシと。

 序盤から中盤まで落とすところまで落として、中盤以降は徐々に上げていく
この上げ方の個々の要素が丁寧に心地良くて(警察署から抜け出すところの
シークエンスとか最高)ラストまで切らさずもって行く。最後の病院のシーンはかなり
グっと来た。んー、こうまで心地良いとは、という感じ。

 警察署のセキュリティーがザルだったり、細部はけっこう粗くて、
いつもなら「それもありだしなあ」、と要素として楽しんでたわけなんだけども、
今回に関しては流れがきちっとしてるのであんまり気にならない。

 あとニコラス・ツェーの男前加減が成龍作品ではありえないぐらい前に
出ているのでここら辺も何か新鮮。青島コートなのは狙いなんだろか?

 その他香港の新進気鋭の若者たちの面構えも、画面映えして良いなあと。
終盤、ジャッキーとのアクションを繰り広げるアンディ・ウォンとかも男前。

 高所、カンフー、大型車で街中デストロイ、と培った要素を余すところなく
盛り込んで、それでいて一つきちんとまとまっている。あといつもよりジャッキーは
心持ち的に一歩引いてるので、そこでバランスがガッチリ来た感がある。

 とにかく「帰って来たんですね!マイ・ヒーロー!」という感じで個人的には
だいぶ胸踊った。そう、ジャッキー映画を見てきた世代つのは、ニコラス・ツェーの
ポジションに感情移入出来るんだわ、コレ。特にここ最近のハリウッド作品見てると。

(2005 03/10)
監督:オリバー・ストーン
製作費1億5000万ドル超、宣伝費4000万ドルの2億級歴史超大作。
主演はコリン・ファレル。

 ある程度、酷いという前情報があったからかも知れんのだけれども、
普通に面白いが7割で、別の意味で面白いが3割ぐらい。

 確かに他のここ近年の「歴史大作映画」に比べると違和感があるのだけれど、
それが単純につまらないに直結するかっつーとそうでもない。

 基本的にいつものオリバー・ストーン感溢れる暑苦しい作りなので、
そこら辺がダメな人はもうたぶん最初から最後までダメな気がしないでもない。
とにかくモノローグが大半を占める序盤の密室劇があまりに「超大作」
からかけ離れた構成なんで、そこら辺で、ああ、おもしろいなあと。

 またフレーム内に収まりきらん勢いのクローズアップを多発するもんだから
目が疲れるというか、もうまさに暑苦しい。もちろんコリン・ファレルはじめ
キャストが軒並み濃いのも全部もう狙いなんだろうと。胸焼けさせる為の。

 ただ中盤以降のアレキサンダーが「東征」をはじめてからの
展開が非常に良く出来ていて、最後にインドに着いたあたりの兵士の疲労感が
観客にも乗り移って来る点で、この3時間超の尺ってのが非常に効果的。

 時間軸いじりかたも意外で、さっくりと流した部分を後から拾って来るあたり
普通に面白い。

 戦闘シーンのスケール感は文句ナシで「人がたくさん殺しあっている」というのが
びしびしと来る、というかけっこう痛い、そしてペルシア軍のラクダとか、インドの象とか
様々で楽しめるんで、単調にならないよう工夫されてるなあ、と。

 象の描写には気合入ってて、特に対象戦のラストのアレクサンダーの馬
VS象のハイスピードカメラを使ったシーンの素晴らしさは異常。
ここまでがっちりとした「見せ場」を疲れ気味の終盤に浴びせられるとちょっと痺れる。

 あと精神的ホモ描写(フィジカルもややあり)満載なんだけれども、なんかそれは
別に気持ち悪くも綺麗にも映らないんで、そこはポイントではないというか。
 
 後々思い出すと、腑に落ちない部分がぼろぼろ出てくるんだけれども、
劇中はそれなりに堕ちていくアレキサンダーの気の毒さが身に染みるんで
演出力に関してはやっぱ一つ抜けてるなあ、と、そんな感じ。

 でも個人的に一番インパクトあったのは雷が落ちるシーンなのな。何故か。
あのシーン思い出すだけで、今でも20秒ぐらい笑える。

 割とネタには困らない映画だなあ、と。

(2005 3/5)
監督:樋口真嗣
フジテレビが13億の邦画としては大きめの予算を叩きこんだ潜水艦戦争映画。
映画化を前提に書き下ろした福井晴敏氏の原作を元に豪華キャストで送る、
樋口真嗣初監督作品。

 手堅い。あまりにも手堅い出来。これが亀山Pの力なのかとかそういう感じ。
ディティールよりも一つの流れとして、大衆映画としての完成度が高い点が。

 冒頭の潜水艦が登場するまでの如何にもなアニメ感溢れる演出から一転
それ以降は、そういったベクトル化を出来る限り抑えて、いっぱしの潜水艦映画
として及第点のストーリーラインで紡いでいくのでダレずに、で、要所要所で
ちょっと熱く、クライマックスへと持って行くので後感はそう悪くないんだけれども、
よくよく思い返すと個々のキャラクタの面構えと演技力の高さに対して、そのもろもろの
モチベーション描写が今一つ浅いんで、もう一歩高いレベルでの感動がない。

 あとその作戦遂行ものとしての戦略的な部分に唸る展開がないつーのが個人的に
残念な部分で、そこら辺はも少し戦争映画しても良かったんではないかと。

 少なくとも「福井晴敏」「樋口真嗣」という名前から期待してしまった部分が
わりと半分ぐらいないので、そこら辺がこのどうにもしっくりこないんだと思った。

 ただ前述の通り、潜水艦映画として考えうる最低限のイベントを踏まえて
艦長の熱さ加減だけは局所的にグっと来るので、きっちりと面白い事だけは確か。
特に期待がなければないほどこれは素直に享受出来るんではないかと。
音楽も似非ジマー節で高揚感煽る煽る。

 とにかく臭う部分は良いところも悪いところもまとめて削ってしまって
キレイにはしたものの、何かどうにも足りなくなってしまった、というような感じ。

 魂の名残を感じるのは屋外描写の合成感とEDロールの「特撮」の部分のみ。

 あとピエール瀧を見てるだけで楽しめる人はそれなりに楽しい。
でもちょっとやっぱり笑ってしまうのだけれども。演技が上手ければ上手いほど。

(2005 03/02)
監督:E・エリアス・マーヒッジ
『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』の同監督が送る地味系超能力系サスペンス。

 導入部でちょっとこれはサプライズ系なのかな、と思わせておいて
実は後半につれてそれがまったくのフェイクであることに気づいたあたりで、
割とこの映画好きになっていた。なんていうか、作品の雰囲気がきちんと
出来あがっているので、そこら辺が。

 序盤の殺人の意味がまったく見えないところから、混沌としてくる中盤、
そして収束していく終盤。大きなどんでん返しとか、ビックリするようなギミックは
ないんだけれども本格的に地味に紡がれていくシークエンスが、その荒野の映像も
効果的に働いて、なにかとても不気味で心地良い。

 個人的にはさっぱり意味がわからなくなりかけのところから、"サスペクト・ゼロ"
と"オブライエン"の関連が繋がる寸前までの展開が緩やかに緊迫しててとても良い。

 わりと最初から最後で歯車は合ってないんだけれども、それさえもなんか意図的
に思えるぐらいビジュアルセンスが統一されてるんで、まあそんなもんかなあ、とか。

 んー言葉では説明し難いんだけれども、下手すりゃ間抜けなB級サスペンスに
なりそうなところを力技で地に足つけさせたような感じ。

 視線の先を常に隠すカメラアングルの使い方とか、ギリギリ気持ち悪い
画面構成、特に人物の立ち位置とかがサスペンス感を増しているあたりで。

 アーロン・エッカートのニュートラルな顔立ちが、ベン・キングズレーの存在感を
増大させていてここら辺のキャスティングとかも地味ながら巧妙だな、と。

 でもキャリー・アン・モスは微妙だなあ。ヒロイン的要素はいらなかったんではないかと
あの位置にも一人オッサンとかがいれば、ますます渋みが増して良かったのになあ。

(2005 02/24)
監督:トニー・スコット
スコット弟がデンゼル・ワシントンとダコタ・ファニングを迎えて送る復讐劇。

 空撮ではじまってちょっともうOK。こっからタイトル踏まえて、一つの誘拐劇を
さっくり見せる(そしていつも通り無駄に格好良いタイポグラフィ)、トニスコ映画を
見に来た!という感じを毎度ながら序盤で完全に浴びさせられるんだからすごい。
間違いなく「メキシコは危険だ!」という一極化した前提が頭に叩き込まれる。

 んで序盤でウォーケンが出てくるんで「こいつは絶対ラスボスだ!」
と普通に思った。結果は各位劇場で。

 置いといて、朴訥デンゼル・ワシントンに人形みたいなダコタ・ファニングの絵面で
割と持つわけで、まあ地味に父性に目覚める過程とかが結構丁寧に描かれてるので
そっから落ちていく、というのをいつもの変な映像でダレずに見せてくれるので
なんつか、逆に安心してしまうというか、やっぱり話は流れに吸収されてるというか。

 脚本にあんまり恵まれてないのは今回も同じで、中盤以降の犯人あてクイズに
意外性のある人物を紛れこますも、それが判明するシークエンスがわりと単調で
とりあえず始まる復讐大会が楽しいなあとか、そういう感じ。

 ちょっと反則に近いラスト前で、そんでまあ最後のシークエンスとかも
それなりに地味なんだけれども、とにかくそのいじくりまわした映像が
なんとかしてしまっているのが弟スコットマジックだと毎回思う。

 ひとつの映画「感」としてあまりに完成してるので、
要はやはり撮り方なんだなあと思う。

(2005 02/24)
監督:ブラッド・バード
ピクサー劇場長編6作目。監督には『アイアン・ジャイアント』のブラッド・バード監督を
迎えての、スーパーヒーロー・リスペクト映画。

 毎度ながらストーリーラインに一点の曇りもないのだけれども、その、この話には
もっと大きな抑揚、んー個人的には上げすぎなぐらいのヤマ場が欲しかった、
というのは贅沢なんだろうと思いつつも、も一つ物足りなかった最大要因。
感覚がほぼ『アイアン・ジャイアント』と同じ。ストーリーの後感に関しては。
 
 単純に言うと絶体絶命からの逆転とかそういう感じの溜めと放出。
場面としてはあるのだけれどもどうにも振り幅が小さい。

 「スーパーヒーロー」「ロボット」には石ノ森、ダイナミック・プロ、東映特撮といった
種々の原体験の洗礼を受けてる邦人の感覚とはやや違うのかもしれない。

 ともかく、アヴァン・タイトルのTVインタビュー映像から、EDのベクトル化された
コラージュまで趣向の限りを尽くした作品の完成度の高さには感嘆するしか
ないというか、ここまで見せられたらもう何も言えなくなるいつものピクサー感。

 そして3DCGの技術てのは作品ごとに確実に進化しているというのは目が受ける
感触でびしびしと感じる。水に濡れたところの表現なんてもう未知の映像だった。

 今回、造型、特にインクレディブル夫人のエロさ加減が異常。も一人のミラージュという
女性キャラも同じくプリミティブにエロいわけですよ、記号的というか、そう土偶のような
というのか。パペットの持つ倒錯感も持ち合わせているからわりと最強。

  演出的な見所は後半の市街戦。とにかくアクション描写が心地良いので
ここら辺だけは繰り返し見たいと。特にフロゾンの動きが良い働きをしてるなあと。
あの白い氷が画面をシュパっと走ると何かテンポが綺麗に繋がるというか。

 というわけで2時間というアニメーションにしては長尺でありながら、何一つ
飽きさせる事なく、あげく老若男女をわりと問わない内容、相変わらずの無敵さ
加減ではあるんだけれども、やはり「ヒーロー」という部分に何か違う期待を
乗せて行くと、ちょっと違うなあ、という感じ。

 ただここら辺は個人的な誤差でしかないので、出来としては作品を重ねるごとに
一つ上に来ている感じがする。
 
(2005 01/28)
監督:周星馳
 『少林サッカー』の大ヒットを受けて、海外資本も入った星爺(愛称)初カンフー映画。

 個々のシークエンスが非常に明白で心地良い、蛇足もある、寒いところもある、
でもそれがわりといつもの星爺映画だと思うので、何かこう全く嫌な気がしない。
ただ歯車が完全にがっちり噛み合った『少林サッカー』の持つストーリーの熱さには
遠く及ばないのは確かで、そこを期待して行くとちょっとツラいかもしれない。

 期待するな、つのが無理な話かもしれませんが。

 冒頭の斧頭会のけっこうバラバラ加減のダンスから豚小屋砦で達人3名が
活躍するまでのテンポが良くて、間にはさんだシンの砦で喧嘩売るシーンの
雛型ともいえるコントでだいぶ解ると言うか、楽しめるんでここら辺までの作りは
秀逸だなあ、と。

 以降はどんどん強い人が出てくる展開なわけですが、相変わらず面構えの
インパクトは各位素晴らしくて、一度見たら忘れない。特にブルース・リャンの
顔ていうのはもう何か本当に達人の域。やっぱり本物は顔さえも何かその
オーラのようなものを帯びてくるのかと。

 CG特化が懸念されてたアクションもそんなに依存しすぎてるわけでもなく、
あくまでマンアクション主体で紡いでいくのでそんなに気にならない程度。
あー、でもOPの1階からワンショットで天井抜けて2階とかそういうトコロに
労力割かなくてもいいのになあ、と適当に思った。

 中盤以降の流れとしては主人公がいつまでも釈然としないので、ややダレかけ
るんだけれども、その次の瞬間にはアクションなのでそこら辺の妙は丁寧に。

 そんなんで何気に見に行くと面白い佳作。
昨今のジャッキー映画にはない、底の深い軽さみたいなものが個人的には好き。

(2005 01/28)
監督:ポール・W・S・アンダーソン
  各映画作品→コミックで対決→ゲームとかにもなる、という紆余曲折を経て
映画で対決という運びに、企画から実現までけっこうかかった夢の競演。

 監督の両作品への愛は痛いほど伝わって来るんだけれども、どうにも終盤
やけくそに近い。むしろ和む。最後のあたりなんてもうちょっと過度の和み具合。

 序盤は丁寧に恐怖を詰めて行くのに、この変化がこれまた突然。
状況を壁にかかれた文字で完全に説明した後にキーワード「敵の敵は味方」
これを念仏のように唱え続け始めたあたりから、これキャラクタのネームバリュー
がなかったら間違いなくビデオスルーされそうな意外な展開が!

 何にせよ、プレデターさん達の行動原理がとにかくデカルチャーなので
それをみてるだけでなにかこうほがらかな暖かさが胸いっぱいに。

 神とあがめられていたのにグーとパーで爆発を表現するそのプリミティブさ加減。

 100分と非常にコンパクトにまとめてあるんのが結構救いで、尺が足りない要素
はたくさんあるのだけれども延ばしたところで面白くなりようがあんまりない気が
するのでこれは監督の英断なんではないかと。

 あとこの手のクライマックスに必要な伏線(弱点なりなんなり)がほぼ皆無な
あたりもわりと潔くて逆に良いのかもしれない。そこに余韻を依存しないぶん
ラストシーンの「どないやねん」加減が爆発してちょっと忘れられない幕引きに。

レックス役のサナ・レイサンは間違いなく「これをどうしろと?」と
心底思ってたに違いない。

 通して思い返すと、ちょっとネタには良いモノみたなあ感がけっこうある佳作。

(2005 01/22)
監督:モーガン・スパーロック
2004年のサンダンス映画祭でそれなりに旋風を巻き起こし体当たり社会派
ドキュメンタリー。マクドナルドを30日食べ続けるという非常にシンプルなお題目。
(本文中、略称はマックだと個人的に違和感があるのでマクドにします。ご了承よろしく。)

 「30日間マクド食べ続けたら医者に「死ぬで」て言われた」という非常にもう何もかも
見る前からわかってるわけでさてそれがどう面白く紡がれてるのか、それが結構楽しみ
だったりしたのですが、これが不思議な事に、30日間マクドを食べ続けてた!という
観賞後の最も大きなインプレッション。そのままだ!

 しかも「これからあんまり食べないようにしよう」とか思ったね。アホかと思いつつも。
今まで言われつつも無抵抗だったのから1ランク上がったような感じで。

 何が面白かったかというと。まず、その狭い近所のマクドに毎日行き来する
わけではなくて、肥満率が高いテキサスとかに行ったりと、ちょっとしたロードムービー
になってる点が大きな流れとして画的に飽きさせない。

 あと、出てくる人間が監督含め変な人が多いのでそこら辺、何か違う笑いが来た。
博士の人とか弁護士の人とか天才アーティストの人とか割と本筋とは関係ない部分で
その個々のキャラクタがいかにもでおもろい。特に監督と、マクドが子供の内に与える
影響を、店舗前で延々語っている博士のバックノイズで子供の声、そしてバーガーを
むさぼる監督、というシーンのシュールさ加減は狙いなのか無意識なのか、割と
黄金の瞬間だと思った。
 
 それとビッグマッグのTシャツ着てる人のアメリカ加減。

 ジーパンで野球帽でデブの人ほどの悪意の塊(でもあれはあれでおもろいから
最高なんだけれども)はないものの、途中でゲロとか胃バイパス手術のグロ映像
とか交えるのはややあくどいなあとか思いつつも。あとムーアと決定的に違うのは
どっかに突撃するわけでなく、ただひたすら、その提供されてるものを摂取し続ける
ことによって打撃を与えるというスタイル、そして監督自身がどんどん弱っていくという点。
 
 特にラスト近辺、マクドナルド側に取材を申込もうとなんどもアポをとろうとしても
向こうにはぐらかされるくだり、これムーアなら間違いなく本社のりこんで社長に
合ってるところなんだけれども、適当にあきらめるあたりがどうにも弱い。
それでも結果的には色々動かしてしまったわけで、そこら辺地味な爽快感が
あるなあと、EDロールで地味な勝利報告を見ながら。

 とりあえず日本の外食分化に溶けこんでる題材なわけで、普段けっこう
利用してる人は見てみるとおもろいんではないかと。

 20日後あたりで医者に「死ぬから止めろ」と言われてから、30日までが
やや早いので、まあとりあえず健康な人なら30日ぐらいでは死なない、という
好意的な受け止め方でフォローしとくのはどうですか?<マクドナルド。
 
(2005 01/8)
監督:シルヴァン・ショメ
 2003年度アカデミー賞アニメーション長編部門、主題歌賞ノミネート、
LA批評家協会賞では音楽賞とアニメーション賞を受賞、NY批評家協会賞でも
アニメーション賞を受賞した仏製アニメーション。

 ストーリーは期待以上のものではなかったんだけれども、それを上回ってたのが
何よりもキャラクタの造型や演出の独自性。その一つ一つの圧倒的な独特さが
毒々さを併せ持ってあまりにも心地良いので唸った。

 個人的に衝撃を受けたのは船。あの船の造型が脳裏に焼き付いて離れない。
ああいうのをさっくり創出してしまえるセンスてのはもう何か孤高の域だと。
あとは犬を動力源に使うところ、最後まで見せない演出もさながら、よもや
そういう形でか!みたいなところもとてつもなく好き。

 あとなにげに描くアコーディオン姉ちゃん(ビビるほど不細工)の不幸な顛末とかも。

 とにかくそのテンポと驚きの造型、演出がこの上なく好きで仕方ない。
もうこれは仕方ないとしか言いようがない。 しかもほぼセリフなしで映像のみで
見せきってしまうところが。んで最後のシークエンス(EDクレジット前のね)の
切なさとかももう何か普通に素晴らしいとしか。

 感覚の部分にガンガン響いてくるんでここら辺言葉に出来ないんだけれども
映像そのものも単純にノスタルジックな質感だけでなくて、トゥーシェードを施した3DCGの
使い方もきちんと作品内に収まっていて、やはり空前な独特感はあるなあ、と。

 も少し上げ幅の大きなカタルシスが加味されれば間違いなくオールタイム・ベストワン
に輝く勢いなんだけれども、展開はあくまで淡々とアンニュイでそこら辺はかろうじて
欧州的と言える部分。物語の大筋はハッピーエンドなんだけれども個々のキャラクタ
の人生は割と酷い事になってるあたりとか。

 まそんでもEDでテーマ曲が流れるとなんかそんな人生でもいいよな、という
感じですっ飛ばしてくれるので、とにかくとても好きな作品。

(2005 01/01)