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上のほうから新しい。

<2006>

監督:レン・ワイズマン
 ケイト・ベッキンセール主演のヴァンパイア・アクション2作目。

 人型だけどこれ人間じゃないからパーッとやっちゃおうという勢いでやっちゃう
アクション・スプラッター度合いが増し過ぎだけれども、これは良い要素。

 あと無駄にぼかしが入ってしまう勢いでエロシーンに尽力してるのも良い要素。

 何がしっくりこないかというとやっぱ脚本で、どうにも良くわからないまま
おつかいロードムービーのままラストアクションに突入する感が。

個人的に致命的なのが最強くさい登場をしながら意外とマヌケなマーカスだとか、
あんだけ引っ張っておいて登場したライカンの祖、ウィリアムにあんまり特徴が
なかったりと、キャラクタの使い方が、特にこういう「特撮」における機微が
あんまりわかってないような気がする。

 いや嫁の撮り方だけちょっと贔屓目なのは別にいいんですよ。主演なわけだし。
でもヒーロー的ポジションのマイケルにもも少しきちんとキャラクタライズをして
あげてください。

 その他の部分を除けば、前作よりもアクションのカットワークも悪くはないし
クリーチャーのイフェクツ、特にライカンに変身するところなんてちょっと唸るし。
そこら辺のビジュアル的な部分は前作よりも良くなってるんだけれども、
ストーリーの部分がライカンVSヴァンパイアの構図を失ってしまってるので
どうにもも一つ物足りない。

(2006 04/29)
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
 2005年全米批評家協会賞の監督賞受賞。原作はグラフィックノベル。

 タイトルバックとラストシーン、この2シーンが有無を言わせない勢いで
むしろそれだけでこの映画の評価はガラっと変わるんでないかと。

 特にラストは「あー、ここで終われば最高なのになあ」というところで終わったので
もうなんつか余韻が最高に近い。ただこれで終われるのか、という大きな話の
流れでの疑問はあるんだけれども、そこら辺のディティールは無視して
良いんではないかと。テーマの部分が「家族」にあるっつー事だろうから。
 とにかく映像としての一つの最高の表現な気がした。

 逆に冒頭は長回しの不気味さを最大限に生かしたシークエンス。
劇中も不意に画面に残るショットガンとか居心地の悪い素敵な演出が満載。
ただそれが謎が謎を呼んだりするかと言えばそうでもなく、
テンポが異様に良いのでサスペンス的な興奮はあんまなかった。

 でもあんま叩いて伸ばしてもダレるプロットだと思うんで、そこら辺の
さじ加減もわりと最善ではないかと、何かこう無駄に絶賛してしまうんだけど
ストーリーラインは本当に普通なのですよ。ただ映画としての紡ぎ方が
スマートに完成されてる+巨匠の変態さ加減がいいアクセントになって
この作品の素晴らしい調和が完成されてるんではないかと。

 R-15の理由は、今回は巨匠のグロの部分じゃなくてエロの部分がおそらく
決め手でセックスシーンの変態さ加減はそこだけややコメディ。場内笑いが起こる。

 あとジョーイな時のヴィゴをはじめ、エド・ハリス、ウィリアム・ハート等々
人相の悪いオッサンが画面を占めるのもなかなか良い塩梅。

(2006 04/19)
監督:押井守
 スーパーライブメーションと命名された写真を使ったアニメーション・コメディ。

 押井感を濃縮しまくって抽出したのがわりとコレで、ここら辺もう一見さんお断りで
完全に個人の嗜好に左右されてしまうんだけれども個人的には好きなので良いと。
ただ止め絵でナレーションの洪水が押し寄せてくると度々軽く睡魔に見舞われた。

  序盤、この手法はちょっとしたストレンジ・アニメーション感をかもし出してなかなか
新鮮に写るんだけれども、それを堪能する間もなくとにかくナレーションの嵐。また
言葉が押井脚本なわけで色々回りくどいというかボキャブラリーがマッシブなので
これを聞き漏らさないように全精力を傾けてるとなかなかキャパシティがおっつかなく
なっくる。なのであんまがんばらないで適当に聞くようにしたら、そのストレンジな
映像と、あとNHKスペシャル的なドキュメンタリーのツボを抑えた川井憲次スコアが
いい具合に調和してああなんかいいなあ、と。

 基本的には出鱈目でただ要所要所に確信を盛り込んで、その悪質な感覚を
二ヒヒと笑う嫌な客層が楽しめる映画なのでまあ総じて一般的ではない。
あと内輪的なニュアンスもかなりあるんだけれどもまあそれほど匂わないので
作品評価そのものをネガティブにする要素でもないなあ。
 
(2006 04/13)
監督:石井克人 ANIKI 三木 俊一郎
 CMなどで活躍中の監督3人のオムニバス映画。

 「語り温泉三人姫」はおもろい。「ギター・ブラザー」の寺島進パート、
あと「ホームルーム」はまあまあおもろい。「アニメ兄弟」は瞬間最大風速的におもろい。

 ただそれ以外が苦痛の領域に達してしまうのは何故なんだろうか。普通に映画見てて
ここまでネガティブな感情に見舞われる事ってあんまないんだけれども、やっぱりどうにも。
特に序盤30分ぐらいは何度かもう帰ろうかとは思った。でその後ぼちぼち面白く
なってくるんでまあその為のフェイクだったらしてやられたなあ、と
見直しはじめたんだけど、以降また寒が戻る初春の気候みたいな展開。

 この手の作品で良く感じるんだけど「バカな事をやろう」的気構えが、どっか一歩
引いた所から感じられて、その後ろから観客は見せられてるというか、その一歩引いた
スタッフの背中を見せられてる気分になって来るんですよ。どうも確固とした作品感が
足りないというか。短編集だからとか共同監督だからってのもあるんだろうけど。

 まあ単純に合わない映画を2時間20分も見るのはさすがにツラかったと。

(2006 04/13)
サウンド・オブ・サンダー
監督:ピーター・ハイアムズ
 製作から公開まで紆余曲折ありすぎて8000万ドルの制作費で全米興収190万ドル
というとても大変な結果になった大コケ作品。原作はレイ・ブラッドベリ。

 その悪評という悪評、といっても漠然とした前情報のみなんだけれども、を刷り込まれて
いたもんだから別段つまらないとは感じなかったというか、まあまあですよこれ。

 確かにちょっとCGIのクオリティは低いし車が三種類ぐらいしか走ってないけど、
『レリック』ん時と同じでピーター・ハイアムズはモンスター撮らすとなかなか悪質な
演出をやってのけるので鼻血でそうになる。水中が最凶だった。

 特に今回メインとなる進化型恐竜のデザインがなかなかストレンジで、
「ノドを狙え!」という突然の弱点指示とかなんか最高。これぞB級(しかし予算は超大作)

 突っ込みどころはこの際いろいろ置いといて、とにかくそのクリーチャーから荒廃した
未来都市の描写、そして刻々と押し寄せる時間の波、ここら辺のビジュアルが良い具合に
洗練されてなくてむしろ何か懐かしいものを見ている気分にさせてくれるというか、
ちょっと新鮮ではあった。

この手の映画が大スクリーンでかかってるならまだ映画は大丈夫だとかそう思った。

(2006 04/08)
監督:アンドリュー・アダムソン
 CSルイス著の児童文学をディズニーが1億8000万ドルかけて映画化。

 クライマックスでピーター守るために突っ込んでいくサイがかなり熱い
あそこはオレイアスよりもサイが熱い。あと女王の白熊タンクとかも最高
実用性無視のビジュアル重視、これこそファンタジーの醍醐味というかウェタの
素晴らしい仕事というか。原作でそういう記述があるかどうかは知らんけど。

 序盤の教授の家まで疎開するシークエンス、タイトルバックを交えてテンポ
良く進むんで、不思議世界を発見するのもサクサク行くのかと思いきやちょっと引っ張る。
結果的に原作付超大作によくあるダイジェスト感が後半顕著になるんで、
この序盤の配分をも少し切り詰めれば、と思うんだけどあんませかせかしても
結局は頭足らずみたいな雰囲気になりかねんのでどうにもこうにも。180分ぐらい
あっても良かったんではなかろうか。

 個人的に良いと思ったのは4兄妹のパッとしない面構え。これが個々の我侭さ加減、
「いかにも子供」という雰囲気を倍増させて、なかなかにクセがあって印象的。
女王やタムナスも良い具合なんだけどアスランにリーアム・ニーソンという
ベタさ加減はどうかと。いやどうせ声色だけじゃわかんないからいいんだけども。

 前述のように終盤の詰まり具合がちょっといっぱいいっぱいで、素人のピーターが
反乱軍の先頭を切るっつーのが今ひとつ腑に落ちないんで最終決戦がどうにも
盛り上がれなかったんだけれども、そのケンタウロスやオークに混じって
普通の動物が戦ってるのがあまりにもイカしてたのでそこでバンザイ。

 いやとにかく終盤のクリーチャー大決戦だけでわりと満足。

(2006 04/08)
監督:ニック・パーク、スティーブ・ボックス
 第78回アカデミー賞 長編アニメーション部門受賞。シリーズ初長編。

 まず大スクリーンでテーマ曲聞いただけで目頭が熱くなる人の感想なので。

 どこが素晴らしいかと言えば全部なんだけど、今回特筆すべきはやはり脚本だと思う。
ちゃんとスリラーというかサスペンスになっていて、タイトルバックはモンスター映画
なんだけれどもまあそれにも近い感じ。所々でそういうサプライズ演出を盛り込むあたり
『チキンラン』 のような当たり障りのない作品にはしねえよという気概が伝わった。

 細かいどうでもいい動きが徹底してて、画面の隅々を目で追うことが楽しい。
特に得意の動物モブ、今回はうさぎなんだけれども、わりと無敵に近い可愛さ加減。
あと毎度ながら美人の定義があまりにもファンタジーなのでステキだとか。

 前作までで細かくステキだった要素を何一つ漏らすことなく受け継いで、
それで一見でも楽しめるように出来ている点と起承転結の「転」の部分で物語を
根幹から転がしてしまう点が個人的には期待を上回った点。

 ただ前作の羊が爆走するシーンのような「もう勘弁してくれ」ぐらいの勢いの
ところが今回はちょっとなかったのが残念な点。
 
(2006 04/04)
監督:スタンリー・トン
 ジャッキー・チェン主演のたぶん歴史超大作。

 もうね、劇場前のポスターにね、「一部映像がおかしいところがありますが監督の
意図で映写機の故障ではありません」云々書いてある時点でもうこれはすごいと。
映写機の故障と間違われるような映像のおかしい場面なんてそうそうありえないと。

 御大の映画はいつもやりたい事はそれなりにわかるんだけれども、だいたい御大色
に染められて、ここ最近はもうどうでもいい領域に収まるんだけど、今作はちょっと
もうどうなったらこういう話が思いつくのかちょっとフローチャートにして欲しいと思った。
企画書の企画意図の部分が気になって眠れなくなった。

 何の予備知識もなかったんで、普通に歴史モノだと思うじゃないですか。順を追って
説明すると、まあ歴史大作ぽいところから始まるわけでこの時点で何故かジャッキーが
写ってるところだけ明らかに縦横比がおかしいわけですよ。全部おかしいなら意図も
しかりなんですが、キム・ヒソンとかチェ・ミンスが写ってるところはわりとまとも(に見えた)
で御大が入るといきなり面長になるんですよ。もうこの時点でどういう意図かさっぱり
なんですが、ひと区切り入ったらいきなり話が現代になるんでド肝抜かれました。

 そしたらトレジャーハンティングはじまるじゃないですか。仮想国なもののインド近辺
をまたいつもの適当なデフォルメしたりとか、粘着質の床でコミカルアクションだとか、
あれあれこれいつものジャッキー映画じゃんとかそういう風に思うと、適当なタイミングで
秦の時代の話になったりで行ったりきたり。これに反重力というSF要素が加わって
最終的にはけっこうな超展開に。でも物凄いおおまかに見たら辻褄が合ってないことも
ないのでちょっと凄いのかも、と思ったけどやっぱそんな事ないわ。

 よくよく考えるとそれなりにちょっとした『幻の湖』 感があるよこれ。
あとあんだけ嫌ってたワイヤーアクションにチャレンジしたり、けっこう激しい描写が
あったりと細かい部分でもチャレンジ魂は見えるんだけど、作品そのものがブッとんで
るんで口あけたまま劇場を後にする事に。

(2006 04/04)
監督:ロニー・ユー
 中国武術の実際の人物を題材にした作品。主演はジェット・リー。

 予告のボルテージは超えれなかったんだけれども、やっぱりロニー・ユーという監督は
普通のシークエンスをきっちりと撮る事が出来る監督だというのが大きな余韻。
特に山村からの作りはけっこう丁寧でクライマックスまできちんと積み上げていく
感じが心地よかった。予備知識なんもなかったんでラストは意外だったんだけれども。

 開幕いきなり武道大会でそっから時間を逆行する回想構成、
これがも一つ個人的にはしっくりこなかったものの、
以後オルド・チャイニーズ・タウンで繰り広げられる生い立ち話はセットの感じとか
すべてがなんかちょっと懐かしい雰囲気のカンフー映画で、そこに李連杰だけでなく
鄒兆龍の演武まで見られるわけでわりとそんだけで良い。

 んでまあいざこざあって山村シークエンスで天津戻るんだけどここら辺の
アクションないパートのテンポがしっかりと出来てて(距離感みたいなの無視
してるあたりとかも悪くない)さっくりと、そして少し熱く武道大会まで繋がるところ、
ここら辺が一番心地よかったなあ、と個人的に。

 ラストがアレなら頭の3試合、そのまま時系列どおりで良かったんではないかと。
和製スパイダーマンの人はそれなりにがんばってたというか、主に顔演技の少ない
物同士、それなりに画にはなってたというか。

 とりあえず三節棍とかそういうのもう反則だ。

(2006 04/07)
監督:カリン・クサマ
 MTV短編アニメの実写化。主演はシャーリーズ・セロン。

 プロダクションとストーリー・ラインに関してはなかなか良くて、
構成さえも少しきちんとしてればまだマシになったんじゃないかと思える惜作。
いや別に後感も酷いというほどではなくて、というかある程度慣らされて来てるので
「またか」とため息をつく程度でなんとか。

 アクションがまったく撮れてなくて、カット数だけはもんすごい多いんだけれども
何がどうなってるかさっぱり不明なのがどうにも。ただセロンのシルエットだけで
ある程度映えるんで、これにそこそこ不思議近未来ランドスケープが融合すると
なんかちょっとステキな気分に。あと足が手になってるシサンドラとかも良い。

 わりときついと思ったのが脚本でどうにも、各々のキャラクターのモチベーションが
謎のベクトルで劇的変化を遂げるんで(たぶん設定的には色々あるんだろうけど)
おおむね2415年なので仕方ないとかそういう感じで。

 イーオンの素性とか都市ブレーニャの存在意義とか要素としてなかなか面白いのに
どうにもそのキャラクター達が今ひとつきちんと機能してないので死んでしまってるというか。

 ピート・ポスルスウェイトは回想シーンになるまで気づかなかった。
 あとイーオンの妹役のアメリア・ワーナーが可愛いと思ったかなり。

(2006 04/04)
監督:ヴィム・ヴェンダース
 主演・脚本はサム・シェパード。この監督・脚本コンビは『パリ、テキサス』以来。

 段々とあがってくる感じ、この緩やかなのぼり坂がラスト近辺で良い具合の心地よさ
になって来て、その一つ一つシークエンスが滑らかに繋がっていくのがたまらない。

 その序盤から飛ばしてみたりとかが一切ないので、ちょっとモンタナに付くまでが
ゆるすぎる。というかこれがヴェンダース感の一端ではあるんだけれども、
終盤やっぱりそのままでは終わらないというかきっちりと締める。

 毎度ながら女子を描かせたら個人的などツボを突かれるわけで、今回の骨壷持った
サラ・ポーリーもわりと最高です。キャラクターのポジションとしても秀逸で、
ひとまずフェイクとして機能してラストではもうわかってるんだけど
最後の最後まで「それである」事を言葉にしないあたりがすばらしい。

 ともかく景観を最大限に使ったフレームワークから郊外アメリカ感は
向こう10年分ぐらい満喫出来た気がする。

(2006 04/04)
監督:富野由悠季
 TVシリーズリメイク3部作完結編。

 なんか投げっぱなし感が足りない、というのは当然で完結編なわけで投げられたら
作品としてダメなんだけれどもでも1、2作目の投げっぱなし感が余韻を深くしてた
事に気づいたというか、個人的に好きだったんだと気づいた。

 TV版とはラストが変わる、という情報のみがあったので、『逆襲のシャア』あたりの
ラストの投げっぱなし感を期待してたのかもしれない。そう、わりと綺麗に収まってる
のが逆になんともしっくりこないという状況。

 最終章だけあって言葉の波がクライマックス感を持ち始めていわゆる「結論」的
ニュアンスの断言がハマーン、シロッコ、クワトロの口からぼこぼこ出てくるので
そこんとこ心地良いなあ、とか。

 基本的には前2作と同じで戦闘シーンを軸にした構成なんで目は飽きないんだけど、
今作は特にバウンド・ドッグやらジ・OやらおかしなカタチのMSがわんさか出てくるの
でなんか子供心に響くものがある。
 けれども1作目のアッシマーみたいな一点突破な新作画があるわけでもないので
とりたてて印象的っつーのもない。

 そういう感じで何かこうベクトル突き抜けた感はあんまない。TVシリーズをまとめるに
あたって尺としては3作では全然足らないのだけれども、1作品から得られるトミノぶんは
2本目あたりでわりといっぱいになったのかもしれない。漠然としすぎか…

 単純に1作目以降徐々にテンションが薄らいだ、という感じ。
3本まとめてみたらまた違うと思うのだけれども。

(2006 04/04)
監督:サム・メンデス
 湾岸戦争での兵士の自伝を基にした作品。ジェイク・ギレンホール主演。

 非常に巧妙に出来てるのは、作品のメッセージ的な部分はわりとブレるというか
受け取る側によってちょっと違うと思うんだけど、結果的に受ける虚脱感てのは
同一のもんなんではないかという点。んでオッサンがバスに乗り込んで来るところ
で終われば最高だったんだけど、ややラスト蛇足。

 テンポ良く淡々とそして個々の表現はややドギツくもそれが現実だと叩きつける
不安定な抑揚がリアルなのではないかと感じさせる。誇張はあるんだけど
力強さがあるというか、一兵卒から見た戦場という雰囲気は伝わる。
戦局は見えないけれども景色だけはめまぐるしく変わるあたりとか。

 全体的にストイックに作ってあるかと言えばそうでもなくわりと音楽ざんざか鳴らして、
ポップコーンムービーを偽装したりもしているあたりがささやかに悪質。

 とにかく人間描写が秀逸で、飄々としてるのに突然キレだしたり、淡々と
壊れた事を言っているけれどもそれが普通としてまかり通る状況とかなかなか唸る。

 ただ最後に三等曹長が「こんな景色が見れるんだから」的ニュアンスの部分は
なんとなくわからいでもない雰囲気の勢いをジェイク・ギレンホールの常に眠たい
ムーミン面がほどよくシカトかますあたりが監督の答えなんではないかと適当に。

 あと馬がなんなのか良くわからんけど馬が出てくるの自体は良いと思った。

(2006 02/24)
監督:スティーブン・スピルバーグ
 1972年のミュンヘン・オリンピックで実際に起こったテロから始まった報復劇を
イスラエル側の暗殺者アヴナーの視点で捉えた作品。

 題材がなんであれコミカルシリアスを忘れない無邪気さがスピ先生の中には
確固としてあって、子供がピアノ弾くところ、あと「俺が隣の部屋で確認する」と言った
あたりの疑う余地のない伏線具合とかがあまりにも心地よくて、そしてきちんと
映像でそれを消化するあたりがやっぱり唸る。完璧だ。普通に完璧だ、と。

  ニュース映像を紡いで、騒然とした雰囲気の中でオリンピックの事件を淡々と見せる
序盤が秀逸で「TVの中の出来事」からアヴナーが登場する流れ。事件をここで
淡々と流したのも実は後に繋がるわけで、ここら辺の構成も何か変態的。

 もっとも個人的にコント感が増すのがとにかく爆発シークエンスで、これがどれも秀逸。
ちょっと終盤ワンパターンだけれどもホテルのとかはもう最高。

 そんな不謹慎な、と言われるかもしれないけれども、もっともっとストレートに
不謹慎なラストが待ってるので、もうこれは悪辣な事この上ないわけで。

 役者陣はいずれも素晴らしいのだけれども、マチュー・アマルリック演じる
ルイという情報屋が良かったなあ。ただあのファミリーの存在はも一つ必要
なさげなんだけれども、だいぶ関連シークエンスを切ってあるんだろか?

 そういった享受の仕方すれば、ディティールは傑作なのだけれども大きな流れが
ちょっと間延びしているのと、散漫で要るシーンがなかったりする気がするんで
後感でバンザイではないかなあ。まあ題材的にカタルシスがないのはわかってたんだけど。
でも細かいところを良いと言い出したらキリがない感じ。

 空港で向こう側のヘリを見てるときの人質の表情とか。
ああいった極限状況の数々を胸打つ形で演出できるところが
スピルバーグのもっとも人間離れした部分だとかそう思った。

(2006 02/16)
監督:クロード・ニュリザニー
    マリー・プレンヌー
『ミクロコスモス』のコンビが送る、地球なぜなにドキュメンタリー。2004年作品。

 邦題は『川の流れのように』でいいような気がしないでもないけどまあ、グレートは
勢いはあるんでグレートでもいいかなあとかどうでもいい枕文。

 吹替版しか上映してなかったので、元のニュアンスがどうかよくわからんのだけれども
基本的には語り部みたいなオッサン一人が壷の前で色々言う→生き物映像、という
繰り返し。序盤はビッグバンから天地創造という流れを見せられてなかなかの
スケール感のデカさに映画の終着点がまったくみえなくなるのだけれども
中盤以降、普通に生物のおもしろ映像大会になるので、テーマがわりと霧散。

 また被写体となる生物のチョイスも得意の昆虫はじめ、あとは爬虫類とかカニとか
主にアンエモーショナルな見た目固めの生き物のわりと見たことない(まあ日常では
見ないしな) 動きがたくさんでそこら辺見れるだけでわりと楽しい。
シークエンスの分け方も明確で「格闘」とか「捕食」とかそういう分類。

 あと音楽が『コーラス』 『WATARIDORI』のブリューノ・クーレというのが売りで
もあるんだけど、画像の動きにあわせたスコアとかは印象に残るんだけど、とりたてて
音楽が効果的に働いた感はないなあ。でも、気持ち悪い音のバックに細胞のような
虹彩を放つ物質が膨張するOPはインパクト大。

 ちょっとストレンジな生物ドキュメンタリーという心構えで臨めばおおむね満足。

(2006 02/03)
監督:パールフィ・ジョルジ
 2002年のハンガリー映画。各国の映画賞などでも色々受賞。

 たまにこういう想像を絶する映画に出会うと、さあ、どうしていいものやらと
もう中盤ぐらいで、これはこのまま終わって行くだろうなあと思ったら、
ちょっとばかし変なベクトルを突然持ち出すし、でも結局そのままだし。

 いやね、つまんない、わかんない、でいいとも思うのですが、それでもこの出来を
見てると確固たる何かが監督の中にあるのは確かで、それのギリギリラインの
物語は見えては来るんだけれども、とにかく挟み込まれる個々のクローズアップとか
(ここんとこちょっとシュバンクマイエル的ではあるんだけれどもそこまで強くはない)
がもう無茶苦茶で何かほとばしる情熱のようなものは感じるのだけれども、
も一つ圧倒的ではないというか。

 書いてるほうがごちゃごちゃして来た。えと、簡単に言うと内包してるテーマは
確固たるものであっても、それをフィルタリングして映像化したこの作品そのものが
も一つ意図的に感じないというか、偶然にある程度依存しているというか。

 どこをどう、という訳ではないのだけれども。ただ、も一つ歯車が合えば
もう一個上の身の毛がよだつものになりそうな雰囲気のまま終わった気がするんで、
そこら辺がどうにも惜しいなあと。

 シチュエーションとか雰囲気が完成してるだけになおさら。
 
 ただ、こうやって反芻しながら、自分の感覚と照らし合わせてる過程で
もいっぺん見たら評価が一変しそうな気がしてきた。どうしよう。

(2006 02/03)
監督:ロベルト・シュヴェンケ
 ジョディ・フォスター主演の飛行機内密室サスペンス。
監督はドイツ出身で、今作が長編ハリウッドデビュー。

 こうストーリーラインが真っ当(具体的には「宇宙人が出てこない」)
だともう逆に物足りないとか思うようになったらもうダメだなあ、とか思いつつも、
やっぱりこの作品自体のサスペンスとしての詰めがやや甘いところが多々。

 何よりも犯人を観客に発覚させるシークエンスがさっくりしすぎているのが致命的。
誰が犯人かわからない緊張感がそこで一気に崩壊するので、
以降わりとグダグダ感が否めない

 色調を寒色に特化させて、あと金属質の光沢もなかなかキラキラしていて
画の作りはほぼ完成しているのだけれども、カメラ横置きとか、ぐるぐるパンショットとか
謎のタイミングでのスローモーションとか、そこら辺の奇抜撮影が、おおむね話の
流れの中にきっちり埋まってる感がないのでちょっとしっくりはこなかった。

 逆に不安感を煽るのには一役買ってる気はするんで、まあそういう手法なのかも。
ミス・リードを誘発するには無節操すぎる各キャラクタのアップのカットの数々も、
それが後から意味のないもんだと分かるとどうにもなあ、とかとか。

 序盤の夫の幻想と街を歩くとこから、中盤のジョディ演じるカイルが乗客全員から
冷たい目で見られるあたりの演出は「嫌な感じ」がかなり良く出てて秀逸。
あとまばたきをしないスチュワーデス役のケイト・ビーハンとかわりと最高。
ショーン・ビーンは居るだけで最高。

 ただどう考えても最後の部分が説明不足で「なんだかよくわからないけれども
飛行機にはとっても硬い部分がある」というアバウトな知識を持って劇場を後に
する結果に。

(2006 02/02)
監督:パンナー・リットグライ
 監督は『マッハ!!!!!!!!』のアクション監督を務めた人で、マッハ監督の
プラッチャヤー・ピンゲーオは今回製作で参加。

 正味トニーは出てないし、誰も続編だと思ってないし、まあなんかこうパーッと
したいのが見たいなあという感覚で劇場に足を運んだらだいたいその通り。

  このチームの特徴なのかEDロールにマッハと同じで「ホントに人がやってますよ」
映像があるんですけれども、ちょっと感動したのはマッハん時は火がついた人を
布でたたいて沈火してたんですが、なんと今回は消火器を使ってるではないですか。
タイの現場はちょっとずつ潤ってるようです。

 さておき、おおむねストーリーなんかはあってないようなもので、中盤の村が
占領されて人がゴミのように殺害されていくシークエンスの容赦のなさは
『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』(開幕一番、子供が射殺)の時代から変わりなく、
まあ濃いというか振り幅が0か1かのデジタル演出。

 んでスタートの合図はタイ国歌。これが流れ終わったあたりからステージがスタート。
以降延々個々の体技を無理矢理ねじこんだ(サッカーとか特に)大乱闘が30分ぐらい
続きに続いて、なんかたくさん人が死んでるけどどう考えても同じ人がたくさん居るように
見えたりするけどもあんま気にならない仕様。

 粗い中にもバンコクが核ミサイルでふっとぶCGとか、あとラストに日本とか
ハリウッドではおそらく消防法にひっかかるレベルの爆発が起こったりと、
その何か黎明期が持つ純度の高い勢いは感じ取る事が出来るんで、
素直におもしろいと思った。

(2006 02/02)
監督:マイク・ニューエル
 シリーズ4作目。監督前作のアルフォンソ・キュアロンから交代で3人目。

 冒頭のメリハリの効いたライティングから、おっと前作と同じでそこそこ重厚な
雰囲気が漂うのかと思いきや、以降、スティーブン・ソマーズ的なざっくりとした
それでいてなんか勢いだけはものすごい展開がほぼ延々。

 あそこまでフッ切れてはないんだけれども突然クディッチワールドカップの
テンションからよくわからん勢いでデスイーターがずかずか歩いてるあたりの
意味不明具合がちょっとしたパニック構成(なにがおこってるのかよくわからん)
という感じ。でも、追いてかれてる感じはするんだけど、
なぜか退屈はあんましなかった。映像表現の部分だけでそれなりに見れるという事かと。

 まあ今回だけは字幕そのものが悪いわけではなくて、説明不足な展開に、さらに
漠然とした変な表現の字幕が追い討ちをかけてるわけで、あー、より悪いじゃん。
詳細は原作でっつーことですか。

 ま、ともかく、ドラゴンを見に行ったわけですよドラゴンを。そしたらなんと4匹
見れるっぽい展開じゃないですか、おっと期待の4倍の楽しさが!と思ったら
3匹ぶんまる飛ばしですよ。ビックリしましたよ。ティーンドラマみたいな
ダンスパーティとかいらないからドラゴン見せろととかそいう客層はマイノリティーなんで
おそらくダンスパーティで正解ですよね。すいませんでした。

 なんにせよ、キャラクタ増えたぶん、特に増えた人達がまったく描けてないので
(どう考えても他校の2名よりもロンの双子の兄のほうがインパクト強い)キャラクタ
映画として視点が絞れてないのはちょっとツライなあとか。

 オチの真犯人当てクイズはいつもの感じで雛型的に、今回はいつものOPの親戚の家で
悲しい目にあるハウス名作劇場パートが省かれてるぶん、ちょっとフォーマット感は
崩れてはきてはあるんだけれども。

 まあ数々のファンタスティックで豪華なプロダクションデザインが楽しいので
だいたいそれだけでもいいかな、と。

(2006 01/20)
監督:アンドリュー・ニコル
 ニコラス・ケイジ主演。監督が実際の武器商人から取材をして脚本を書き上げたとか。

 もっとブラックコメディ色が強いかと思ったらそうでなくわりと直球というか、
けっこう強烈に作られてたので驚いた。余韻は大きいなあ。あと流れとしては
まとまりそうにないのに意外ときちんとまとまってたのにも驚いた。

 ラストのオチの部分は演出によってはちょっと寒くなるんだけれども、
そこを淡々とやってのけたあたりで変な色が出ずに綺麗におさまってるというか。

 一発の銃弾が工場で作られて銃身から放たれるまでのシークエンスを、銃弾視点の
ワンショットで描くタイトルバックが秀逸。ここら辺のクセ具合からますます最初は
ウィットに飛ばす系の映画だと思ってたわけで。

 単純に武器商人の手法としておもろい序盤から、俄然暴力性が増してくる
重いリベリア編(特に終盤の弟のくだりはなかなか壮絶)、そしてわりと読めなかった
ラストまで、個々のシークエンスがかなり印象的で特に、一晩で飛行機が
バラされてなくなったりするのを固定早回しで見せたりするのはちょっと唸った。

 あとこういう悩み顔の似合う、うさん臭い商売人をやらせたらニコラス・ケイジは
わりと完璧に近い。苦悩が滲みつつも嫌なオッサンぶりがちょっと最高。

(2006 01/19)
監督:ヴィム・ヴェンダース
 2004年のドイツ・アメリカ合作。同年のベネチア映画祭のユネスコ賞受賞作品。

 久々に真っ当なヴェンダース感に溢れた長編劇映画に出会った、という感慨。
『エンド・オブ・バイオレンス』 『ミリオンダラー・ホテル』つのはややベクトルが
違うというか、何か純正ではないような異物感があって、それはそれで好きだった
という感じではあるのだけれども。

 なので今回はわりと何も言う事なく、ずっと、うわぁいいなあ、と「間」と音楽に
浸っていたというか。豪快なビデオ撮りで、ハイビジョンカメラとかそういうレベルじゃなくて
ひょっとしてこれ民生機じゃないのかコレ、という画質なんだけれども
そんな事気になるのは最初だけで、あとはヴィムの雰囲気を堪能。

 やっぱダメなオッサン描かせると俄然神懸ってくるのな。
大まかな流れで見ると完全にコメディなんだけれども、それを地につけて
哀愁漂う具合に描けてるのがまず一つすばらしくて、叔父さんを生暖かく
見守るミシェル・ウィリアムズが可愛いのでなんか個人的なツボに
クリティカルヒットした感がある作品。

 終盤、911に言及する場面がちらほらあるだけれども、それに対する訴えとか
メッセージ的なものをヴィムが本当に意識してるかどうかは知らんのだけれども
物語内の要素として消化されてて浮いてないと、ま、ちょっとひっかかる部分では
あるのだけれども。

 とにもかくにも空気が完成されている事に尽きる一本。

(2006 1/19)